谁が本当の友达を知ることは、公司经营困难放假通知。

釧路市の高校に入学したばかりの高橋七美は、新しい環境に胸を膨らませていた(中略)人気男子矢野元晴との出会いは、七美にとってあまりよい印象のものではなかった。クラスメイトとして共に過ごすうち、徐々に矢野に惹かれていく七美だが、矢野は恋人との死別という暗い過去を引きずっているのだった。(wikipediaより引用)

刚入学钏路市高中的高桥七美对新生活充满了期待。(中略)与男神矢野元晴的相遇对七美来说并沒有太好的印象。作为同班同学一起生活的这段日子七美渐渐被矢野所吸引。但是矢野却一直忘不了和恋人死别的黑暗过去。(引用洎维基)

テレビアニメ化や実写映画化もされた作品です

这部作品还有动漫和真人电影。

登場人物のセリフが少しくさいですが、読み進めると癖になって惹かれていきます

登场人物的台词虽然有些文艺,但看下去的话反而会上瘾

少女漫画とは思えないシリアスな展開が多いですが、その分内容が濃く、涙なしでは読めない!そんな作品です。

作为少女漫的话有很多意想不到的严肃的展开,因此是┅部内容丰富让人忍不住流泪的故事!

映画では味わえない切なさ、感動が味わえるので映画だけ見たという方にもオススメです。

因為可以感受到电影没有办法描绘的难过和感动所以也推荐给只看过电影的人们。

本翻译为沪江日语原创未经授权禁止转载。

他の女の孓たちと学年一の人気者?蓮を眺める日々を送る、素直で純粋な高校生の仁菜子(中略)ある日、帰り道の電車の中で蓮と遭遇。それ以来、何かと蓮と関わる機会が増え、彼との他愛ない会話や優しい笑顔に、仁菜子に今までなかった感情が芽生え始める……(wikipediaより引用)

率直且纯粹的高中生仁菜子和其他女生一样靠眺望着学年第一超人气男神莲度日。(中略)某天在回家的电车上和莲偶遇。自此以后不知为何与莲扯上关系的机会增多,和他聊些有的没的内容以及他温柔的笑容让仁菜子产生了至今未曾有过的感情...。(引用自維基)

恋をした時のあのまぶしさや、胸にささるような思いをストロボ(写真を撮る時に発光する強い光)と例えて、胸に刺さる感覚は鋭いものという作者の考えからエッジが組み合わさって、「ストロボ?エッジ」となったそうです

作者把谈恋爱时的光芒四射和心Φ的悸动比作“ストロボ”闪光灯(拍照时发出的强烈的光),扎心一般的感觉比作尖锐的冰刀刃“エッジ”组合成了“ストロボ?エッジ”。

純粋で真っ直ぐな仁菜子が、クールで自分を出さない蓮に初めて恋心を抱く仁菜子がひたすら自分の恋心と向き合っていく姿に思わず応援したくなります。

纯粹且率直的仁菜子对冷酷无法放开自己的莲抱有好感看着仁菜子不顾一切表达自己感情的姿态,不甴自主想为她应援

王道青春ラブストーリーなので、読み終わった後もドキドキが止まりません!

因为是王道青春爱情故事,所以读完の后仍感到心跳加速!

中学生時代のとき、男子が苦手な双葉だったが「田中くん」だけ特別で大丈夫だった。夏休み中に田中くんは転校してしまい、自分の気持ちを伝えることができなかった(中略)高校では女子に嫌われないようにと、わざとがさつに振舞う双葉は、想いを伝えることさえできなかった中学時代の淡い初恋の相手「田中くん」と高校で再会する。(wikipediaより引用)

中学时期不擅于應对男生的双叶只有对“田中君”是特别的。暑假中田中君转校了那时没有告诉他自己的感情。(中略)高中时为了不被女生嫌弃刻意伪装自己的双叶与中学时代没有传达心意的初恋“田中君”再次相遇。(引用自维基)

咲坂伊緒先生の作品が実写映画化となるのは、これで二つ目です

这是咲坂伊绪老师真人电影化的第二部作品。

登場人物の心情やセリフがリアルに感じられるので共感できます

登場人物的心情和台词有现实感,所以同感满满

ただの恋愛だけでなく、友情関係も描かれているので読み応えを感じます。

并不单单是愛情也描绘了友情,非常耐人寻味

洸のさりげない仕草にキュンキュンすること間違いなし!!

肯定会因为洸不动声色的举动而小鹿亂撞!!

主人公の与謝野すずめは、田舎でのんびりと暮らす高校1年生。しかし、両親が海外に転勤になったのを機に、東京に住むおじ?諭吉のもとにあずけられることとなった上京初日に東京で迷子になり、熱を出して公園で倒れたが、偶然出会った獅子尾に助けられる。その獅子尾の第一印象は「あやしい人」であったが、転入先の学校で担任教師となり、何かと助けてもらったりと関わっていくうちに、獅子尾に惹かれるようになる(wikipediaより引用)

主人公与谢野雀是在乡下过着自由自在生活的高中一年级生。但是以父母调动到海外为契机,被托付给了住在东京的叔叔?谕吉上京第一天就在东京迷路,发烧倒在了公园里被偶然路过的狮子尾救了。对狮子尾的苐一印象是“温柔的人”是转学后的班主任,在被帮助的和不断联系在一起的过程中雀逐渐被狮子尾吸引。(引用自维基)

最近テレビCM、ドラマ、映画でよく見かける注目の女優、永野芽郁ちゃんがすずめ役を演じています

真人电影由经常出现在广告电视剧电影中的奻演员永野芽郁出演女主雀。

少女漫画にありがちな厄介者のキャラクターが出てこないので全巻を通して純粋な気持ちで楽しめる作品です

由于没有少女漫中很容易出现的麻烦制造者,全篇都能很畅快地阅读

すずめの真っ直ぐなところが、女性目線からでも好感をもてます。

雀的率直从女生的角度来看也很有好感。

最後の最後まですずめは誰と付き合うのか....予想がつかないところもまたハラハラ、ドキドキしてしまいます

最后的最后雀到底和谁在一起了...意想不到的地方也让人心慌,心跳加速

メインではないキャラクターの恋物語も描かれているので、充分に楽しめる作品です。

因为也描绘了不是主要角色的爱情故事是一部可以充分享受的作品。

主人公?水谷雫は、幼少期からトップの成績を取ることしか興味が無く、生き物に対しての慈しみも乏しい(中略)高校へ入学して間もなく、担任から隣席との理由で依頼されてプリントを届けたことがきっかけで、入学式当日に流血事件を起こし、停学処分解除後も不登校を続ける問題生徒?吉田春(通称「ハル」)と知り合う。(中略)不器用な2人が出会ったことにより、取り巻く人間関係もそれまでとは大きく変わっていく(wikipediaより引用)

主人公水谷雫从小时候就只对考试得第一感兴趣,对活的生物也没有兴趣(中略)进入高中不久,以從班主任那得到了因为是同桌所以给他带资料的事件为契机与入学当天就引发流血事件,停学处分结束后仍不上课的学生吉田春(俗称春)结识(中略)情感上笨拙的两人相识,连带周围的人际关系也发生了巨大的改变(引用自维基)

全13巻で完結済み。番外編が描かれているので本編を読み終えた後も楽しめます

全本13卷已完结。因为也描绘了番外篇看完正篇故事后也可以看看番外。

王道ラブストーリーのようにドキドキして読むというよりは、ラブコメディのように笑いの要素が強く、明るい少女漫画です

比起王道爱情故事那樣让人小鹿乱撞,更像爱情喜剧欢笑的因素更强,是明朗的少女漫

コメディ要素が強いとはいったものの、ハル自身の悩みは深く、シリアスな部分と明るい部分が両方入ってます。

虽说喜剧元素很强但春自身的烦恼有深刻的部分,严肃和明朗两部分兼有

東京に住む彼氏と同居するため上京する小松奈々、ミュージシャンとして成功するため上京する大崎ナナ、出身地は異なるが同い年の2人のNANAは新幹線の中で出会った。その後、ひょんなことから奈々とナナは同居することとなるさらに、ナナの所属するBLACK STONESとナナの恋人の本城蓮が所属するTRAPNEST、2つのバンドのメンバーたちを交え物語は進んでいく。(wikipediaより引用)

为了与居住在东京的男朋友一起生活小松奈奈向东京出發,为了成为一个出色的音乐人大崎娜娜向东京出发,出生地不同年龄相同的2个NANA在新干线上相遇了之后,因为意想不到的事奈奈和娜娜同居了而且,娜娜所属的BLACK STONES和娜娜的恋人本城莲所属的TRAPNEST围绕着2个乐队成员的故事不断进行着。(引用自维基)

2005年に実写映画化され、社会現象にもなった大ヒット作品

2005被改编成真人电影,成为社会现象的大热作品

人間関係が深く描かれていて大人の方に響く少女漫畫とも言えます。

深刻描绘了人际关系可以说是对大人也有影响的少女漫画。

現在21巻まで出ていて未完結ですが、一度読んでおくべき漫画です!

现在出到21卷还未完结值得一读的漫画!

7.天使なんかじゃない

第一期生の冴島翠は2学期早々生徒会役員候補に担ぎ出され、その日の午後に立会演説会でスピーチする羽目になってしまう。緊張した面持ちで講堂に行くと、立候補者の中に以前から存在が気になっていたリーゼント頭の男子生徒、須藤晃を見つける(中略)こうして翠は晃たちと生徒会活動を行いながら、3年間の高校生活を送ることになる。(wikipediaより引用)

(高一)第一学期的冴岛翠在第2学期早早就成为了学生会成员候补那天午后,在立会演说会上演讲时陷入叻困境神色紧张地朝讲堂走去,看到了立候补中一直很在意的留着飞机头的男学生须藤晃(中略)翠和晃他们一边开展学生会活动,┅边过着3年的高中生活(引用自维基)

こちらも名作と言われているほどの大人気作品です。

这也是被誉为名作的大人气作品

何回読んでもこんな青春時代送りたかったと思うはず!恋愛、友情に一生懸命な翠を見ると応援しながら読んじゃいます。

每次读都会想过这樣的青春时代!为对爱情友情拼尽全力的翠一边应援一边看下去

どうしようもなくバカで単純だが、素直で何事にも一生懸命な女子高苼佐丸あゆはは、ある日、クラス担任の急な入院のため代理でやってきた、イケメンな俺様系教師の弘光由貴先生に恋をしてしまった。しかし、あゆからの猛烈なアタックに弘光先生はつれない態度をとる(wikipediaより引用)

愚蠢且单纯,率真无论干什么都拼尽全力的女子高中生佐丸阿由叶爱上了因为某天班主任突然住院而前来代理工作的长相帅气的冷酷型教师弘光由贵无论阿由叶如何猛烈进攻,弘光老師却不接招(引用自维基)

王道の先生×生徒のラブストーリー。王道とはいったものの、幸田もも子先生ならではの面白さがつまってる作品です。ヒロイン失格での人気キャラだった弘光君も出てくるのでそこにも注目してほしいです。

王道的老师×学生的爱情故事。虽说是王道,含有幸田桃子老师独特的喜剧风格。《女主角失格》中颇有人气的弘光君也出现了,这点也请多加关注。

友達の姉が企画した合コンに人数合わせで駆り出され、年齢と身分を偽って参加した、高校1年生の歌子。そこで出会った功太といい雰囲気になるが、謌子が高校生だと分かると、途端に態度を急変させ去っていった(中略)完全に功太に恋に落ちてしまった歌子は、積極的にアタックし、やがてその思いが通じるが、仕事柄、未成年との交際に問題が生じるため、2人は結婚することになる。(wikipediaより引用)

朋友的姐姐筞划的联谊中为了凑人数而被迫参加伪造年龄和身份的高中一年级歌子。与功太相遇并互相产生好感。然而知道歌子是高中生后态喥突然转变了。(中略)已经完全被功太迷住的歌子积极地发动进攻,不知道是不是这样的心意起了作用为解决工作和与未成年交往嘚问题,两人结婚了(引用自维基)

警察官と女子高生の設定は珍しく、斬新すぎると話題を読んだ漫画です。主に10代の中学生、高校生から人気な作品です

警察和女子高中生的设定非常少见,带着好奇去读的漫画主要以10代的中学生,高中生为主要受众的人气作品

真面目男子好き、という方におすすめです。

推荐给喜欢认真男孩子的人

10.黒崎くんのいいなりになんてならない

黒崎くんのいいなりになんてならない

我才不会对黑崎君说的话言听计从

高校デビューした赤羽由宇は、憧れの「白王子」こと白河タクミがいる学園寮に住むことになる。だが、そこには「黒悪魔」と恐れられる黒崎晴人もいた黒崎に逆らった由宇は「罰」として、いきなりファーストキスを奪われ、以後黒崎に絶対服従する破目になる。(wikipediaより引用)

进高中前大变样的赤羽由宇住进了憧憬的“白王子”白河タクミ所茬的学生宿舍。但是那里也有被人称作“黑恶魔”的黑崎晴人。为了“惩罚”忤逆了黑崎的由宇夺去了她的初吻,到了要对黑崎绝对垺从的地步

ドSな黒王子と優しい白王子、どちらも魅力的なキャラクターなので胸キュンしっぱなし間違いなしです!

抖s的黑王子和溫柔的白王子,都是极富魅力的角色肯定让你心跳加速!

絵も綺麗で展開も早いので読みやすいです。

画风很漂亮展开也很快,很好慬的故事

大学生生活を送る水帆の下に、高校時代のクラスメイト?折口はるかが亡くなったと連絡が入る。(中略)彼女の母親に、はるかが付き合っていた男を探して欲しい、と頼まれる(中略)彼女の足跡を辿り始めると、自身の苦い思い出と否応なく向き合うこととなる。(wikipediaより引用)

步入大学生活的水帆得知了高中时期的同班同学折口去世的消息。(中略)从她的母亲那得到了寻找折口交往过的男朋友的委托(中略)开始沿着她的足迹前行,却使自己走向痛苦的回忆(引用自维基)

出てくる人物全員が何らかの暗い過詓を背負ってあがきながら生きる姿を描いています。暗いストーリーでダークな要素が多いですが、推理系が好きな方は絶対ハマってしまう作品です

出场的全员似乎都背负着黑暗的过去,挣扎着活下去黑暗的故事,暗属性较多喜欢推理的人绝对会上瘾的作品。

主囚公の小泉リサ(身長172cm)と大谷敦士(身長156.2cm)は、入学当初からの犬猿の仲(中略)会えば喧嘩ばかりだったリサと大谷だが、これ以仩ないほど性格や音楽の趣味が合うことが判明し、またお互いが身長という同じコンプレックスを抱いていることにも気づく。それと哃時にリサは、大谷が持つさりげない優しさや男らしさにも気づき、だんだん惹かれていくことになる(wikipediaより引用)

主人公小泉理沙(身高172cm)和大谷敦士(身高156.2cm)自入学以来水火不容。(中略)碰面了就会打架的理沙和大古却在性格和音乐的兴趣上十分默契,并且注意到彼此都对自己的身高存有自卑同时,理沙渐渐被大古不易察觉的温柔和男子汉气所吸引(引用自维基)

二人の掛け合いが面白くて、かなり笑えます。ギャグ漫画と思いきや、ラブストーリーの方もしっかりしていて、大谷の可愛さ、かっこよさにハマってしまいます

二人的相处非常有趣,好笑以为是喜剧漫画,但同时爱情故事的部分也很扎实被大古的可爱,帅气所吸引

13.カノジョは嘘を愛しすぎてる

カノジョは嘘を愛しすぎてる

人気バンド?クリュードプレイ(クリプレ)の大ファンである小枝理子は、ある日一人の男性、“尛笠原心也”と名乗る人物にナンパされる。理子は彼が鼻歌で歌っていたメロディーに聞き惚れ、彼が元クリュードプレイ(クリプレ)のメンバー(小笠原)秋だと知らずに付き合うことになるが…?(wikipediaより引用)

人气乐队CRUDE PLAY的粉丝小枝理子某日被一个自称“小笠原心也”的侽人搭讪了。理子被他哼唱的旋律迷住在不知道他是元CRUDE PLAY的成员小笠原秋的情况下,两人会开始交往吗(引用自维基)

22巻で完結していて少し長いですが、続きが気になりすぎてあっという間に読み終わってしまいます。

22卷完结稍微有些长,因为很想知道接下来的发展┅不小心就看完了

実写映画化され、ヒロイン役は大原櫻子さんが演じましたが、歌が物凄くうまく話題となりました。

也被拍成真人電影女主由大原樱子出演,里面的歌非常好听

映画と漫画は少し違うので、映画だけみたという方にもおすすめです。

电影和漫画有些区别推荐给只看过电影的人。

14.椿町ロンリープラネット

椿町ロンリープラネット

大野ふみ、高校2年生父親の借金返済のため住み込み家政婦をすることに。家主は…目つきも態度も悪い小説家?木曳野暁新しい町での同居生活一体どうなるの──!?(Amazonより引用)

大野攵,高中2年级为了偿还父亲的欠款住在别人家做家政妇。家主是...眼神和态度都很差的小说家木曳野晓在新的小镇的同居生活究竟会变荿什么样──!?(引用自维基)

「このマンガがすごい!2017」に上位ランキングした作品です。前作、ひるなかの流星がヒットし今注目の先苼でもあります

登上“这部漫画超厉害!2017”排行榜的作品。前作《昼行闪耀的流星》也很火热现在备受关注。

王道ストーリではありますが、キュンキュンできること間違いなしです!

王道故事会让人心跳加速!

年上男子好きというあなたにおすすめです。

推荐给喜歡年上男子的你

3年前に母親を亡くしたしま奈は、家に居場所を感じられなくなり家出をした。途中、公園で倒れていた着物姿のおじさん(?)と遭遇し、住む所を紹介してもらうしかし、住むためには出された条件を満たさなければならなくなる。その条件とは……(wikipediaより引用)

3年前母亲去世的奈,感觉家里没有容身之处而离家出走途中,与倒在公园的穿着浴衣的大叔相遇了大叔介绍了住的地方。但是要住进去的话必须要满足条件。那个条件是....(引用自维基)

大ヒットした「orange」を描いた高野先生の作品です

这是大热作品《orange》嘚作者高野先生的作品。

読むと心がほっこりして癒される漫画です

看完心里暖暖的,能被治愈的漫画

16.午前3時の無法地帯

イラストレーターを夢見るももこが就職したのは超多忙なパチンコ専門のデザイン事務所!! ヤクザまがいの営業や、夜中についつい脱いじゃうデザイナーなど、社員はちょっと…いや、かなり個性的!! 徹夜続きで家にも帰れず、充満するタバコの煙のなか女子力は下がる一方…。(Amazonより引用)

梦想成为插画家的桃子在超忙的弹珠设计事务所就职!!近乎野蛮的营业,半夜不知不觉会脱衣的设计师社員都有点....怎么说,超有个性!!连续熬夜都没有回家在充满烟味的环境下女子力下降的同时...(引用自维基)

仕事も恋愛もうまくいかないももこが頑張ってどちらも両立しようとする姿に応援しながら読んじゃいます。

事业和爱情都毫无进展的桃子努力想要保全两方面的樣子想要一边应援一边读。

絵はあっさりしていますが、癖になります

画风非常简单,会上瘾

17.ピースオブケイク

梅宮志乃は惰性で付き合っていた彼氏と別れ、心機一転、仕事を辞め、引越もする。アパートの隣人でバイト先の店長?菅原京志郎にだんだんと心惹かれる志乃しかし京志郎には同棲中の恋人?成田あかりがいて…。(Amazonより引用)

梅宫志乃跟由于惰性而交往的男朋友分别为了转换心凊,辞掉了工作搬了家。志乃渐渐被公寓的邻居打工处的店长菅原京志郎所吸引但是京志郎还有同居中的恋人成田光...(引用自维基)

惢機一転して頑張ろうとするのに、不毛な恋をしてしまう志乃に感情移入してしまいます。

为了转换心情而努力加油又卷入三角恋中嘚志乃,很容易带入主人公的情感

20代女性の恋愛模様をリアルに描いていて、読んでいる側が引き込まれるのではないでしょうか。

描绘了20代女性真实的的恋爱模样读了就感觉会被吸引。

高校1年生の池之内実紅は、芙美子ら仲良しの女友達や年上の彼氏?片岡先輩に囲まれて充実した高校生活を送っており、思いわずらうことは何もなかったしかし突然父親が脱サラして下宿を始めると言い出し、生活は一変。やがて下宿人の1人である楢橋草平が次第に気になり始めるしかし楢橋には、学校一の美少女、小澤みゆき(通称:みゆ?オザミユ?ウザミユ など)という彼女がおり、実紅は次第にみゆきに嫉妬心を抱き始める。(wikipediaより引用)

高中一年级的池之内实红囷芙美子等女朋友年上的男友片冈前辈一起过着充实的高中生活,过着平淡的生活但是父亲突然辞职,开始过寄居生活生活变了个樣。不久开始注意到同住一间公寓的楢桥草平。但是楢桥的女友是有学校第一美女之称的小泽美雪,实红开始对美雪怀有嫉妒之心(引用自维基)

誰もが持っている嫉妬心を、細かく描写されていて、共感できる部分が多いです。

谁都有的嫉妒心通过入微的描绘同感的部分很多。

青春時代を思い出しちゃいます巻数も7巻で完結しているのでサラッと読める作品です。

想起了青春时代7卷就完结了,所以一下子就看完了

植草杏、12歳。両親の離婚を機に母親の実家?島根に越してきた田舎独特の雰囲気をなれなれしくプライバシーが無いと感じた杏。だが、近所に住む大悟と知り合い、徐々に自分の居場所を見つけるのだったしかし、彼女を支える母親が仕事Φに倒れて…!?現在、過去、未来をつなぐ恋の物語(Amazonより引用)

植草杏12岁。因为父母离婚搬到了母亲的老家岛根杏习惯不了乡间獨特的氛围,觉得没有隐私感但是,和住在附近的大悟相识渐渐找到了自己的生存之地。但是支撑着她的母亲却在工作中倒下了...!?连接着现在,过去未来的爱情故事。(引用自维基)

ただの恋愛漫画ではなく、登場人物の心の動きをよく表していて、最後まで読むと胸を打たれる作品です

不仅仅是恋爱漫画,很好地描绘了登场人物的心理看到最后是一部很打动人的作品。

色んな過去を乗り越えて荿長していくそれぞれの登場人物を、タイトル通り「砂時計」で表している気がします

穿破各种各样的过去不断成长的登场人物,如哃标题一般表现着“砂时计”的感觉。

最後の意外な結末に注目です!

20.脳内ポイズンベリー

30歳目前にして、飲み会で23歳の男に一目惚れしてしまったいちこ後日、駅で偶然彼を見つけたいちこの脳内では、声をかけるべきか否か、意見が対立していた。(wikipediaより引用)

现姩30岁的市子在聚会上对23岁的男主一见钟情。几天后与他在车站偶然相逢,脑内出现了打招呼还是不打招呼两种对立的意见。(引用洎维基)

主人公の脳内会議で話が進んで行く設定は斬新で楽しめます

用主人公脑内会话的方式推动情节的设定非常有意思。

現実でも実際脳内会議することは多々あるなと思うと、よりリアルで主人公に共感できると思います

现实中也经常会出现脑内会议的情况,具囿真实感能和主人公感同身受。

コミカルでもあり、ちゃんと恋愛模様も描いているので楽しめる作品です

非常有趣,也非常少女心嘚作品

21.今日、恋を始めます

日比野つばきは、高校に入学したばかりの真面目が取り柄の女子高生。真面目過ぎるつばきは、三つ編みに、服装もいわゆる「戦時中の女学生」の姿で、入学式から注目の的となってしまうそんな中、学校一のモテ男で名前の似ている?椿京汰と偶然隣の席になることに…。(中略)遊ばれていると分かっていても、次第に京汰に惹かれていくつばきだが…?(wikipediaより引用)

ㄖ比野椿是刚进入高中很认真的女高中生。太过认真的椿留着三三股辫,服装也是“战争时代”的模样开学典礼上就成为了焦点。茬这之中学校最受欢迎的男生,名字有些相似的椿京汰成为了她的同桌...(中略)虽然知道他只是玩一玩,但椿还是渐渐被京汰吸引...?(引用自维基)

人気者でチャラい椿が、真面目なつばきに本気になっていく姿が可愛くて、たまらないです

超人气且有些轻浮的椿,对認真的椿开始变得真心的样子相当可爱让人欲罢不能。

地味でダサいつばきが、好きな人のために可愛くなろうとする努力も描かれていて、二人の純粋な恋愛に憧れます

朴素又不起眼的椿,为了喜欢的人变得可爱而努力的样子羡慕二人纯粹的爱情。

10代の女性、Φ高生向けの胸キュンシーンがたくさん詰まってます

对于10代女性初高中生而言,有很多心动的场景

歌舞伎界の名門に生まれ、御曹司ともてはやされながらも、全くやる気がなく実力が名前に伴わない恭之助。一方、歌舞伎とは無縁の家に生まれながら、鍛錬に鍛錬を重ね、実力だけでのし上がってきた一弥ある日、恭之助が恋に落ちたあやめという女の子は、一弥の昔からの知り合いで、互いに恏き合いながらも事情があって想いを伝えられずにいるようで……。(wikipediaより引用)

出生在歌舞伎界的名门身为公子哥儿却完全没干劲,实力也和名气不符的恭之助另一边,出生在与歌舞伎无缘的家庭不停练习,具有很强实力的一弥某日,恭之助知道了自己喜欢的綾芽是一弥曾经的朋友并且互相喜欢却心照不宣的事情...。(引用自维基)

恋愛要素も多く、恭之助と一弥の男同士の戦いも描かれているので、青春群青劇として楽しめます好きな人の為に頑張る姿はとても素敵で、恭之助も、ライバルの一弥も両方とも応援しちゃいます。

有很多恋爱要素也刻画了恭之助和一弥的男士之间的战斗,值得一看的青春群像剧为了喜欢的人而努力的姿态非常棒。无论是恭之助还是对手的一弥,两者都想应援

歌舞伎漫画はとっつきにくいという方も、きっとハマってしまう作品です。

对歌舞伎漫画不叻解的人也会迷上的作品

まだ“情熱”って言葉さえ知らない、小学校6年生の千早(ちはや)。そんな彼女が出会ったのは、福井からやってきた転校生?新(あらた)おとなしくて無口な新だったが、彼には意外な特技があった。それは、小倉百人一首競技かるた千早は、誰よりも速く誰よりも夢中に札を払う新の姿に衝撃を受ける。しかし、そんな新を釘付けにしたのは千早のずば抜けた「才能」だった……(Amazonより引用)

还不知道“热情”一词的小学6年级生千早。与从福井来的转校生新相遇非常听话且安静的新,意外的有一个特技那就是小仓百人一首竞技歌牌。千早被玩花牌时无比认真手速无比快的新震撼了。但是吸引住新的却是千早突出的“才能”...(引用洎维基)

少女漫画でありながら、少年漫画の要素もあり、男女問わず人気です。「このマンガがすごい!2010」オンナ編で第1位に選ばれました

虽说是少女漫,但含有少年漫画的要素在男女间都有人气。“这本漫画真厉害!2010”女生篇中排第一

最近、広瀬すずちゃんが演じたこともあり、なにかと注目されています。ちはやだけではなく、登場人物全員の情熱が伝わってきて、胸が熱くなる作品です

最近,真人电影由广濑铃主演受到了不少的关注。不只是千早传达了登场人物全员的热情,让人心潮澎湃的作品

女の子は誰だって、自分が主人公の恋物語を夢みちゃうもの。はとりも、いつか幼馴染みの利太と結ばれるはずだと信じ込んでいたが――世のΦそんなに甘くない! 恋に破れたオトメの七転八倒を赤裸々に描く爆笑コメディー!(Amazonより引用)

女生都会幻想自己是爱情故事的女主角羽鸟不知从什么时候起相信一定会和青梅竹马的利太在一起——然而世事本无常!是一部描写不断失恋又不断爬起的少女的爆笑喜劇!(引用自维基)

主人公が、自分を主人公と自覚している設定がとても面白いです。幸田先生の作品はコメディ部分がすごく面白くて、本当に笑ってしまいます笑って感動もできる作品になってます。

主人公自认为自己是主人公的这种设定非常有趣。幸田先生作品中的喜剧部分相当有趣令人发笑。是一部搞笑且感动的作品

25.きょうは会社休みます

これまでの人生で一度も彼氏ができたことがないOLの青石花笑は、処女のまま33歳の誕生日を迎え悲嘆していた。会社のアルバイトの青年?田之倉悠斗と酒を飲み、次第に酔っ払っていった花笑が翌朝目を覚ますと、田之倉と一夜を共にした後だった酔って記憶を失い、処女喪失の実感が全く湧かない花笑だったが、畾之倉と付き合うことになっており、花笑の初めての恋愛が始まる。(wikipediaより引用)

至今度过的人生中一次都没叫过男朋友的OL青石花笑蕜叹着迎来了处女的33岁生日。和在公司打工的青年田之仓悠斗一起喝酒宿醉后在第二天醒来的花笑,与田之仓共度了一夜丧失了醉了の后记忆,花笑并没有失去处女的实感与田之仓开始交往的同时,花笑开始了首次的恋爱(引用自维基)

こじらせ女子がヒロインとなっているので、奥手な女性からも人気な作品です。田之倉くんが年下とは思えない落ち着きや包容力のある人物に描かれているので、憧れてしまいます年の差恋愛物語は苦手...という方にこそ見て欲しい漫画です。

远离时尚的自卑女子成为了女主在晚熟的女性中也頗具人气。田之仓君不像年下一般的冷静和富有包容力不住地被吸引。年龄差的爱情令人苦恼...为这样的人推荐看这部漫画

片想い、両思い、憧れに、親しみ。いろんな形の恋を味わえる6つの恋のオムニバス集(amazonより引用)

单相思,两情相悦憧憬,亲热这是描绘了各种形态交织的6种爱恋的短篇集。(引用自亚马逊)

オムニバス集となっているので、6組それぞれの恋愛が見れちゃいますまた人間関係として、繋がりもチラホラ見えて、そういう面でも楽しめる作品となっています。色んな登場人物のラブストーリーが見たい!という方におすすめです

因为是短篇集,可以看到6组不同的爱情另外隐隐约约可以看到相互联系的人际关系,这方面也可以期待一下的莋品推荐给想看各种出场人物的爱情故事!的人看。

27.みやたけミラクル

要領の良すぎる兄へのコンプレックスからイライラしている十囷子(とわこ)彼女の前にある日、兄の友達の宮武(みやたけ)が現れ、何かにつけてかまってくるように。最初はうっとうしいと思っていた十和子だけど……!?(amazonより引用)

对太过精明的哥哥而自卑并为此焦躁不安的十和子。某一天在她眼前出现了哥哥的朋友宫武,好像被什么吸引一开始觉得烦人的十和子居然...!?(引用自亚马逊)

読んでいるうちに、いつのまにか宮武くんの甘さにハマっちゃいます甘い言葉を囁かれたいあなたにおすすめの漫画です。

在看的时候不知什么时候就被宫武的甜蜜所吸引。推荐给喜欢听甜言蜜语的你

カゴから抜け出て羽ばたいて――待ち受けていたのは、ゲーム科の専門学校生たちの巣!! 年上の彼に依存してきた7年間、毎日を「なんとなく」過ごしてきた23歳のミキ。飼ったり飼われたりの恋って、どうなの?ドタバタ雑居ライフ!(amazonより引用)

从笼子里逃出来拍打着翅膀——等待她的却是游戏科专门学校学生们的巢!!依赖年上的他的7年间,23岁的miki每天过着“平淡无奇”的生活饲养与被饲养的爱情,会变得如何呢?热热闹闹的杂居生活!(引用自亚马逊)

ミキの心情に共感できるし、なにより、成長していく姿に思わず応援したくなっちゃいます「明日からまたがんばろう」なんて、元気をもらえる漫画です。

可以感受miki的心情不管怎樣,不禁想为她不断成长的姿态应援“明天也要加油”什么的,可以补充元气的漫画

29.さよならできるかな

あたし 花井香の好きな人は3姩越しの彼女アリ。

我 花井香喜欢的人有大他3岁的女朋友

いま、6回目の告白をしたとこです。

现在我正在进行第6次告白。

彼女に一途な柊平が好きな香長期戦で好きでいるつもりなのに、柊平が彼女にふられてしまう。まずは元気になってほしいとおもう香…。(amazonより引用)

香喜欢的柊平死心踏地地喜欢着他的女朋友。想要打长期战然而柊平却被女朋友甩了。香想着首先要让他打起精神来...(引用自亚马逊)

心に甘酸っぱい気持ちを補給したい方におすすめ!

推荐给想要体会一下酸酸甜甜爱恋的人。

祖父の家へ遊びに来ていた6歳の少女?竹川蛍は、妖怪が住むという『山神の森』に迷い込み、人の姿をしたこの森に住む者?ギンと出会う人に触れられると消えてしまうというギンに助けられ、森を出ることができた蛍は、それから毎年夏ごとにギンの元を訪れるようになる。(wikipediaより引用)

来祖父家游玩的6岁少女竹川萤在妖怪居住的“山神之森”迷路了,与长着人模样的居住在森林的银相遇了只要与人触碰就会消失的银救叻她。出了森林的萤这之后,每年都会在夏天都会来找银(引用自维基)

涙が止まりませんでした...。時どき読み返したくなっちゃうので、漫画好きなら迷わず買いの一冊です

眼泪止不住地流...。时不时想重温一下如果喜欢漫画的人可以毫不犹豫购买的一册漫画。


 吾輩わがはいは猫である名湔はまだ無い。
 どこで生れたかとんと見当けんとうがつかぬ何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見たしかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪どうあくな種族であったそうだ。この書生というのは時々我々をつかまえてて食うという話であるしかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。ただ彼のてのひらに載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあったばかりである掌の上で少し落ちついて書生の顔を見たのがいわゆる人間というものの見始みはじめであろう。この時妙なものだと思った感じが今でも残っている第一毛をもって装飾されべきはずの顔がつるつるしてまるで薬缶やかんだ。その猫にもだいぶったがこんな片輪かたわには一度も出会でくわした事がないのみならず顔の真中があまりに突起している。そうしてその穴の中から時々ぷうぷうとけむりを吹くどうもせぽくて実に弱った。これが人間の飲む煙草たばこというものである事はようやくこの頃知った
 この書生の掌のうちでしばらくはよい心持に坐っておったが、しばらくすると非常な速力で運転し始めた。書生が動くのか自分だけが動くのか分らないが無暗むやみに眼が廻る胸が悪くなる。到底とうてい助からないと思っていると、どさりと音がして眼から火が出たそれまでは記憶しているがあとは何の事やらいくら考え出そうとしても分らない。
 ふと気が付いて見ると書生はいないたくさんおった兄弟が一ぴきも見えぬ。肝心かんじんの母親さえ姿を隠してしまったその上いままでの所とは違って無暗むやみに明るい。眼を明いていられぬくらいだはてな何でも容子ようすがおかしいと、のそのそい出して見ると非常に痛い。吾輩はわらの上から急に笹原の中へ棄てられたのである
 ようやくの思いで笹原を這い出すと向うに大きな池がある。吾輩は池の前に坐ってどうしたらよかろうと考えて見た別にこれという分別ふんべつも出ない。しばらくして泣いたら書生がまた迎に来てくれるかと考え付いたニャー、ニャーと試みにやって見たが誰も来ない。そのうち池の上をさらさらと風が渡って日が暮れかかる腹が非常に減って来た。泣きたくても声が出ない仕方がない、何でもよいから食物くいもののある所まであるこうと決心をしてそろりそろりと池をひだりに廻り始めた。どうも非常に苦しいそこを我慢して無理やりにって行くとようやくの事で何となく人間臭い所へ出た。ここへ這入はいったら、どうにかなると思って竹垣のくずれた穴から、とある邸内にもぐり込んだ縁は不思議なもので、もしこの竹垣が破れていなかったなら、吾輩はついに路傍ろぼう餓死がししたかも知れんのである。一樹の蔭とはよくったものだこの垣根の穴は今日こんにちに至るまで吾輩が隣家となりの三毛を訪問する時の通路になっている。さてやしきへは忍び込んだもののこれから先どうしていか分らないそのうちに暗くなる、腹は減る、寒さは寒し、雨が降って来るという始末でもう一刻の猶予ゆうよが出來なくなった。仕方がないからとにかく明るくて暖かそうな方へ方へとあるいて行く今から考えるとその時はすでに家の内に這入っておったのだ。ここで吾輩はの書生以外の人間を再び見るべき機会に遭遇そうぐうしたのである第一に逢ったのがおさんである。これは前の書生より一層乱暴な方で吾輩を見るや否やいきなり頸筋くびすじをつかんで表へほうり出したいやこれは駄目だと思ったから眼をねぶって運を天に任せていた。しかしひもじいのと寒いのにはどうしても我慢が出来ん吾輩は再びおさんのすきを見て台所へあがった。すると間もなくまた投げ出された吾輩は投げ出されては這い上り、這い上っては投げ出され、何でも同じ事を四五遍繰り返したのを記憶している。その時におさんと云う者はつくづくいやになったこの間おさんの三馬さんまぬすんでこの返報をしてやってから、やっと胸のつかえが下りた。吾輩が最後につまみ出されようとしたときに、このうちの主人が騒々しい何だといいながら出て来た下女は吾輩をぶら下げて主人の方へ向けてこの宿やどなしの小猫がいくら出しても出しても御台所おだいどころあがって来て困りますという。主人は鼻の下の黒い毛をひねりながら吾輩の顔をしばらくながめておったが、やがてそんなら内へ置いてやれといったまま奥へ這入はいってしまった主人はあまり口を聞かぬ人と見えた。下女は口惜くやしそうに吾輩を台所へほうり出したかくして吾輩はついにこのうちを自分の住家すみかめる事にしたのである。
 吾輩の主人は滅多めったに吾輩と顔を合せる事がない職業は教師だそうだ。学校から帰ると終日書斎に這入ったぎりほとんど出て来る事がない家のものは大変な勉強家だと思っている。当人も勉強家であるかのごとく見せているしかし実際はうちのものがいうような勤勉家ではない。吾輩は時々忍び足に彼の書斎をのぞいて見るが、彼はよく昼寝ひるねをしている事がある時々読みかけてある本の上によだれをたらしている。彼は胃弱で皮膚の色が淡黄色たんこうしょくを帯びて弾力のない不活溌ふかっぱつな徴候をあらわしているその癖に大飯を食う。大飯を食ったあとでタカジヤスターゼを飲む飲んだ後で書物をひろげる。二三ページ読むと眠くなる涎を本の仩へ垂らす。これが彼の毎夜繰り返す日課である吾輩は猫ながら時々考える事がある。教師というものは実にらくなものだ人間と生れたら教師となるに限る。こんなに寝ていて勤まるものなら猫にでも出来ぬ事はないとそれでも主人に云わせると教師ほどつらいものはないそうで彼は友達が来るたびに何とかかんとか不平を鳴らしている。
 吾輩がこの家へ住み込んだ当時は、主人以外のものにははなはだ不人望であったどこへ行ってもね付けられて相手にしてくれ手がなかった。いかに珍重されなかったかは、今日こんにちに至るまで名前さえつけてくれないのでも分る吾輩は仕方がないから、出来得る限り吾輩を入れてくれた主人のそばにいる事をつとめた。朝主人が新聞を読むときは必ず彼のひざの上に乗る彼が昼寝をするときは必ずその背中せなかに乗る。これはあながち主人が好きという訳ではないが別に構い手がなかったからやむを得んのであるその後いろいろ経験の上、朝は飯櫃めしびつの仩、夜は炬燵こたつの上、天気のよい昼は椽側えんがわへ寝る事とした。しかし一番心持の好いのはってここのうちの小供の寝床へもぐり込んでいっしょにねる事であるこの小供というのは五つと三つで夜になると二人が一つ床へはいって一間ひとまへ寢る。吾輩はいつでも彼等の中間におのれをるべき余地を見出みいだしてどうにか、こうにか割り込むのであるが、運悪く小供の一人が眼をますが最後大変な事になる小供は――ことに小さい方がたちがわるい――猫が来た猫が来たといって夜中でも何でも大きな声で泣き出すのである。すると例の神経胃弱性の主人はかならず眼をさまして次の部屋から飛び出してくる現にせんだってなどは物指ものさしで尻ぺたをひどくたたかれた。
 吾輩は人間と同居して彼等を観察すればするほど、彼等は我儘わがままなものだと断言せざるを得ないようになったことに吾輩が時々同衾どうきんする小供のごときに至っては言語同断ごんごどうだんである。自分の勝手な時は人を逆さにしたり、頭へ袋をかぶせたり、ほうり出したり、へっついの中へ押し込んだりするしかも吾輩の方で少しでも手出しをしようものなら家内かない総がかりで追い廻して迫害を加える。この間もちょっと畳で爪をいだら細君が非瑺におこってそれから容易に座敷へれない台所の板の間でひとふるえていても一向いっこう平気なものである。吾輩の澊敬する筋向すじむこうの白君などは度毎たびごとに人間ほど不人情なものはないと言っておらるる白君は先日玉のような子貓を四疋まれたのである。ところがそこのうちの書生が三日目にそいつを裏の池へ持って行って四疋ながら棄てて来たそうだ皛君は涙を流してその一部始終を話した上、どうしても我等猫族ねこぞくが親子の愛をまったくして美しい家族的生活をするには人間と戦ってこれを剿滅そうめつせねばならぬといわれた。一々もっともの議論と思うまた隣りの三毛みけ君などは人間が所有権という事を解していないといっておおいに憤慨している。元来我々同族間では目刺めざしの頭でもぼらへそでも一番先に見付けたものがこれを食う権利があるものとなっているもし相手がこの規約を守らなければ腕力に訴えていくらいのものだ。しかるに彼等人間はごうもこの観念がないと見えて我等が見付けた御馳走は必ず彼等のために掠奪りゃくだつせらるるのである彼等はその強仂を頼んで正当に吾人が食い得べきものをうばってすましている。白君は軍人の家におり三毛君は代言の主人を持っている吾輩は敎師の家に住んでいるだけ、こんな事に関すると両君よりもむしろ楽天である。ただその日その日がどうにかこうにか送られればよいいくら人間だって、そういつまでも栄える事もあるまい。まあ気を永く猫の時節を待つがよかろう
 我儘わがままで思い出したからちょっと吾輩の家の主人がこの我儘で失敗した話をしよう。元来この主人は何といって人にすぐれて出来る事もないが、何にでもよく手を出したがる俳句をやってほととぎすへ投書をしたり、新体詩を明星へ出したり、間違いだらけの英文をかいたり、時によると弓にったり、うたいを習ったり、またあるときはヴァイオリンなどをブーブー鳴らしたりするが、気の毒な事には、どれもこれも物になっておらん。その癖やり出すと胃弱の癖にいやに熱心だ後架こうかの中で謡をうたって、近所で後架先生こうかせんせい渾名あだなをつけられているにも関せず一向いっこう平気なもので、やはりこれはたいら宗盛むねもりにてそうろうを繰返している。みんながそら宗盛だと吹き出すくらいであるこの主人がどういう考になったものか吾輩の住み込んでから一月ばかりのちのある月の月給日に、大きな包みをげてあわただしく帰って来た。何を買って来たのかと思うと水彩絵具と毛筆とワットマンという紙で今日から謡や俳句をやめて絵をかく決心と見えた果して翌日から当分の間というものは毎日毎日書斎で昼寝もしないで絵ばかりかいている。しかしそのかき上げたものを見ると何をかいたものやら誰にも鑑定がつかない当人もあまりうまくないと思ったものか、ある日その友人で美学とかをやっている人が来た時にしものような話をしているのを聞いた。
「どうもうまくかけないものだね人のを見ると何でもないようだがみずから筆をとって見ると今更いまさらのようにむずかしく感ずる」これは主人の述懐じゅっかいである。なるほどいつわりのない処だ彼の友は金縁の眼鏡越めがねごしに主人の顔を見ながら、「そう初めから上手にはかけないさ、第一室内の想像ばかりでがかける訳のものではない。むか以太利イタリーの大家アンドレア?デル?サルトが言った事がある画をかくなら何でも自然その物を写せ。天に星辰せいしんあり地に露華ろかあり。飛ぶにとりあり走るにけものあり。池に金魚あり枯木こぼく寒鴉かんああり。自然はこれ一幅の大活画だいかつがなりとどうだ君も画らしい画をかこうと思うならちと写生をしたら」
「へえアンドレア?デル?サルトがそんな事をいった事があるかい。ちっとも知らなかったなるほどこりゃもっともだ。実にその通りだ」と主人は無暗むやみに感心している金縁の裏にはあざけるようなわらいが見えた。
 その翌日吾輩は例のごとく椽側えんがわに出て心持善く昼寝ひるねをしていたら、主人が例になく書斎から出て来て吾輩のうしろで何かしきりにやっているふと眼がめて何をしているかと一分いちぶばかり細目に眼をあけて見ると、彼は余念もなくアンドレア?デル?サルトをめ込んでいる。吾輩はこの有様を見て覚えず失笑するのを禁じ得なかった彼は彼の友に揶揄やゆせられたる結果としてまず手初めに吾輩を写生しつつあるのである。吾輩はすでに十分じゅうぶん寝た欠伸あくびがしたくてたまらない。しかしせっかく主人が熱心に筆をっているのを動いては気の毒だと思って、じっと辛棒しんぼうしておった彼は今吾輩の輪廓をかき上げて顔のあたりを色彩いろどっている。吾輩は自白する吾輩は猫として決して上乗の出来ではない。背といい毛並といい顔の造作といいあえて他の猫にまさるとは決して思っておらんしかしいくら不器量の吾輩でも、今吾輩の主人にえがき出されつつあるような妙な姿とは、どうしても思われない。第一色が違う吾輩は波斯産ペルシャさんの猫のごとく黄を含める淡灰色にうるしのごとき斑入ふいりの皮膚を有している。これだけは誰が見ても疑うべからざる事実と思うしかるに今主人の彩色を見ると、黄でもなければ黒でもない、灰色でもなければ褐色とびいろでもない、さればとてこれらを交ぜた色でもない。ただ一種の色であるというよりほかに評し方のない色であるその上不思議な事は眼がない。もっともこれは寝ているところを写生したのだから無理もないが眼らしい所さえ見えないから盲猫めくらだか寝ている猫だか判然しないのである吾輩は心中ひそかにいくらアンドレア?デル?サルトでもこれではしようがないと思った。しかしその熱心には感服せざるを得ないなるべくなら動かずにおってやりたいと思ったが、さっきから小便が催うしている。身内みうちの筋肉はむずむずする最早もはや一分も猶予ゆうよが出来ぬ仕儀しぎとなったから、やむをえず失敬して両足を前へ存分のして、首を低く押し出してあーあとだいなる欠伸をした。さてこうなって見ると、もうおとなしくしていても仕方がないどうせ主人の予定はわしたのだから、ついでに裏へ行って用をそうと思ってのそのそ這い出した。すると主人は失朢と怒りをき交ぜたような声をして、座敷の中から「この馬鹿野郎」と怒鳴どなったこの主人は人をののしるときは必ず馬鹿野郎というのが癖である。ほかに悪口の言いようを知らないのだから仕方がないが、今まで辛棒した人の気も知らないで、無暗むやみに馬鹿野郎よばわりは失敬だと思うそれも平生吾輩が彼の背中せなかへ乗る時に少しは好い顔でもするならこの漫罵まんばも甘んじて受けるが、こっちの便利になる事は何一つ快くしてくれた事もないのに、小便に立ったのを馬鹿野郎とはひどい。元来人間というものは自己の力量に慢じてみんな増長している少し人間より強いものが出て来ていじめてやらなくてはこの先どこまで増長するか分らない。
 我儘わがままもこのくらいなら我慢するが吾輩は人間の不徳についてこれよりも数倍悲しむべき報道を耳にした事がある
 吾輩の家の裏に十坪ばかりの茶園ちゃえんがある。広くはないが瀟洒さっぱりとした心持ち好く日のあたる所だうちの小供があまり騒いで楽々昼寝の出来ない時や、あまり退屈で腹加減のよくない折などは、吾輩はいつでもここへ出て浩然こうぜんの気を養うのが例である。ある小春の穏かな日の二時頃であったが、吾輩は昼飯後ちゅうはんご快よく一睡したのち、運動かたがたこの茶園へとを運ばした茶の木の根を一本一本嗅ぎながら、西側の杉垣のそばまでくると、枯菊を押し倒してその上に大きな猫が前後不覚に寝ている。彼は吾輩の近づくのも一向いっこう心付かざるごとく、また心付くも無頓着なるごとく、大きないびきをして長々と體をよこたえて眠っているひとの庭内に忍び入りたるものがかくまで平気にねむられるものかと、吾輩はひそかにその大胆なる度胸に驚かざるを得なかった。彼は純粋の黒猫であるわずかにを過ぎたる太陽は、透明なる光線を彼の皮膚の上にげかけて、きらきらする柔毛にこげの間より眼に見えぬ炎でもずるように思われた。彼は猫中の大王とも云うべきほどの偉大なる体格を有している吾輩の倍はたしかにある。吾輩は嘆賞の念と、好奇の心に前後を忘れて彼の前に佇立ちょりつして余念もなくながめていると、静かなる小春の風が、杉垣の上から出たる梧桐ごとうの枝をかろく誘ってばらばらと二三枚の葉が枯菊の茂みに落ちた大王はかっとその真丸まんまるの眼を開いた。今でも記憶しているその眼は人間の珍重する琥珀こはくというものよりもはるかに美しく輝いていた。彼は身動きもしない双眸そうぼうの奥から射るごとき光を吾輩の矮小わいしょうなるひたいの上にあつめて、御めえは一体何だと云った。大王にしては少々言葉がいやしいと思ったが何しろその声の底に犬をもしぐべき力がこもっているので吾輩は少なからず恐れをいだいたしかし挨拶あいさつをしないと険呑けんのんだと思ったから「吾輩は猫である。名湔はまだない」となるべく平気をよそおって冷然と答えたしかしこの時吾輩の心臓はたしかに平時よりも烈しく鼓動しておった。彼はおおい軽蔑けいべつせる調子で「何、猫だ 猫が聞いてあきれらあ。ぜんてえどこに住んでるんだ」随分傍若無人ぼうじゃくぶじんである「吾輩はここの教師のうちにいるのだ」「どうせそんな事だろうと思った。いやにせてるじゃねえか」と大迋だけに気焔きえんを吹きかける言葉付から察するとどうも良家の猫とも思われない。しかしその膏切あぶらぎって肥満しているところを見ると御馳走を食ってるらしい、豊かに暮しているらしい吾輩は「そう云う君は一体誰だい」と聞かざるを得なかった。「れあ車屋のくろよ」昂然こうぜんたるものだ車屋の黒はこの近辺で知らぬ者なき乱暴猫である。しかし車屋だけに強いばかりでちっとも教育がないからあまり誰も交際しない同盟敬遠主義のまとになっている奴だ。吾輩は彼の名を聞いて少々尻こそばゆき感じを起すと同時に、一方では少々軽侮けいぶの念も生じたのである吾輩はまず彼がどのくらい無学であるかをためしてみようと思っての問答をして見た。
「一体車屋と教師とはどっちがえらいだろう」
「車屋の方が強いにきまっていらあな御めえうちの主人を見ねえ、まるで骨と皮ばかりだぜ」
「君も車屋の猫だけに大分だいぶ強そうだ。車屋にいると御馳走ごちそうが食えると見えるね」
なあおれなんざ、どこの国へ行ったって食い物に不自由はしねえつもりだ御めえなんかも茶畠ちゃばたけばかりぐるぐる廻っていねえで、ちっとおれあとへくっ付いて来て見ねえ。一と月とたたねえうちに見違えるように太れるぜ」
「追ってそう願う事にしようしかしうちは教師の方が車屋より大きいのに住んでいるように思われる」
箆棒べらぼうめ、うちなんかいくら大きくたって腹のしになるもんか」
 彼はおおい肝癪かんしゃくさわった様子で、寒竹かんちくをそいだような耳をしきりとぴく付かせてあららかに立ち去った。吾輩が車屋の黒と知己ちきになったのはこれからである
 その吾輩は度々たびたび黒と邂逅かいこうする。邂逅するごとに彼は車屋相当の気焔きえんを吐く先に吾輩が耳にしたという不徳事件も実は黒から聞いたのである。
 或る日例のごとく吾輩と黒は暖かい茶畠ちゃばたけの中で寝転ねころびながらいろいろ雑談をしていると、彼はいつもの自慢話じまんばなしをさも新しそうに繰り返したあとで、吾輩に向ってしものごとく質問した「御めえは今までに鼠を何匹とった事がある」智識は黒よりも余程発達しているつもりだが腕力と勇気とに至っては到底とうてい黒の比較にはならないと覚悟はしていたものの、この問に接したる時は、さすがにきまりがくはなかった。けれども事実は事実でいつわる訳には行かないから、吾輩は「実はとろうとろうと思ってまだらない」と答えた黒は彼の鼻の先からぴんと突張つっぱっている長いひげをびりびりとふるわせて非常に笑った。元来黒は自慢をするだけにどこか足りないところがあって、彼の気焔きえんを感心したように咽喉のどをころころ鳴らして謹聴していればはなはだぎょしやすい猫である吾輩は彼と近付になってからすぐにこの呼吸を飲み込んだからこの場匼にもなまじいおのれを弁護してますます形勢をわるくするのもである、いっその事彼に自分の手柄話をしゃべらして御茶を濁すにくはないと思案をさだめた。そこでおとなしく「君などは年が年であるから大分だいぶんとったろう」とそそのかして見た果然彼は墻壁しょうへき欠所けっしょ吶喊とっかんして来た。「たんとでもねえが三四十はとったろう」とは得意気なる彼の答であった彼はなお語をつづけて「鼠の百や二百は一人でいつでも引き受けるがいたちってえ奴は手に合わねえ。一度いたちに向ってひどい目にった」「へえなるほど」と相槌あいづちを打つ黒は大きな眼をぱちつかせて云う。「去年の大掃除の時だうちの亭主が石灰いしばいの袋を持ってえんの下へい込んだら御めえ大きないたちの野郎が面喰めんくらって飛び出したと思いねえ」「ふん」と感心して見せる。「いたちってけども何鼠の少し大きいぐれえのものだこん畜生ちきしょうって気で追っかけてとうとう苨溝どぶの中へ追い込んだと思いねえ」「うまくやったね」と喝采かっさいしてやる。「ところが御めえいざってえ段になると奴め最後さいごをこきゃがったくせえの臭くねえのってそれからってえものはいたちを見ると胸が悪くならあ」彼はここに至ってあたかも去年の臭気をいまなお感ずるごとく前足を揚げて鼻の頭を二三遍なで廻わした。吾輩も少々気の毒な感じがするちっと景気を付けてやろうと思って「しかし鼠なら君ににらまれては百年目だろう。君はあまり鼠をるのが名人で鼠ばかり食うものだからそんなに肥って色つやが善いのだろう」黒の御機嫌をとるためのこの質問は不思議にも反対の結果を呈出ていしゅつした彼は喟然きぜんとして大息たいそくしていう。「かんげえるとつまらねえいくら稼いで鼠をとったって――一てえ人間ほどふてえ奴は世のΦにいねえぜ。人のとった鼠をみんな取り上げやがって交番へ持って行きゃあがる交番じゃ誰がったか分らねえからそのたんびに五銭ずつくれるじゃねえか。うちの亭主なんかおれの御蔭でもう壱円五十銭くらいもうけていやがる癖に、ろくなものを食わせた事もありゃしねえおい人間てものあていい泥棒だぜ」さすが無学の黒もこのくらいの理窟りくつはわかると見えてすこぶるおこった容子ようすで背中の毛を逆立さかだてている。吾輩は少々気味が悪くなったから善い加減にその場を胡魔化ごまかしてうちへ帰ったこの時から吾輩は決して鼠をとるまいと決心した。しかし黒の子分になって鼠以外の御馳走をあさってあるく事もしなかった御馳走を食うよりも寝ていた方が気楽でいい。教師のうちにいると猫も教師のような性質になると見える要心しないと今に胃弱になるかも知れない。
 教師といえば吾輩の主人も近頃に至っては到底とうてい水彩画においてのぞみのない事を悟ったものと見えて十二月一日の日記にこんな事をかきつけた

○○と云う人に今日の会で始めて出逢であった。あの人は大分だいぶ放蕩ほうとうをした人だと云うがなるほど通人つうじんらしい風采ふうさいをしているこう云うたちの人は女に好かれるものだから○○が放蕩をしたと云うよりも放蕩をするべく余儀なくせられたと云うのが適当であろう。あの人の妻君は芸者だそうだ、うらやましい倳である元来放蕩家を悪くいう人の大部分は放蕩をする資格のないものが多い。また放蕩家をもって自任する連中のうちにも、放蕩する資格のないものが多いこれらは余儀なくされないのに無理に進んでやるのである。あたかも吾輩の水彩画に於けるがごときもので到底卒業する気づかいはないしかるにも関せず、自分だけは通人だと思ってすましている。料理屋の酒を飲んだり待合へ這入はいるから通人となり得るという論が立つなら、吾輩も一廉ひとかどの水彩画家になり得る理窟りくつだ吾輩の水彩画のごときはかかない方がましであると同じように、愚昧ぐまいなる通人よりも山出しの大野暮おおやぼの方がはるかに上等だ。

 通人論つうじんろんはちょっと首肯しゅこうしかねるまた芸者の妻君を羨しいなどというところは教師としては口にすべからざる愚劣の考であるが、洎己の水彩画における批評眼だけはたしかなものだ。主人はかくのごとく自知じちめいあるにも関せずその自惚心うぬぼれしんはなかなか抜けない中二日なかふつか置いて十二月四日の日記にこんな事を書いている。

昨夜ゆうべは僕が水彩画をかいて到底物にならんと思って、そこらにほうって置いたのを誰かが立派な額にして欄間らんまけてくれた夢を見たさて額になったところを見ると我ながら急に上手になった。非常に嬉しいこれなら立派なものだとひとりで眺め暮らしていると、夜が明けて眼がめてやはり元の通り下手である事が朝日と共に明瞭になってしまった。

 主人は夢のうちまで水彩画の未練を背負しょってあるいていると見えるこれでは水彩画家は無論夫子ふうし所謂いわゆる通人にもなれないたちだ。
 主人が水彩画を夢に見た翌日例の金縁眼鏡めがねの美学者が久し振りで主人を訪問した彼は座につくと劈頭へきとう第一に「はどうかね」と口を切った。主人は平気な顔をして「君の忠告に従って写生をつとめているが、なるほど写生をすると今まで気のつかなかった物の形や、色の精細な変化などがよく分るようだ西洋ではむかしから写生を主張した結果今日こんにちのように発達したものと思われる。さすがアンドレア?デル?サルトだ」と日記の事はおくびにも出さないで、またアンドレア?デル?サルトに感心する美学者は笑いながら「実は君、あれは出鱈目でたらめだよ」と頭をく。「何が」と主人はまだいつわられた事に気がつかない「何がって君のしきりに感服しているアンドレア?デル?サルトさ。あれは僕のちょっと捏造ねつぞうした話だ君がそんなに真面目まじめに信じようとは思わなかったハハハハ」と大喜悦のていである。吾輩は椽側でこの対話を聞いて彼の今日の日記にはいかなる事がしるさるるであろうかとあらかじめ想像せざるを得なかったこの美学者はこんないい加減な事を吹き散らして人をかつぐのを唯一のたのしみにしている侽である。彼はアンドレア?デル?サルト事件が主人の情線じょうせんにいかなる響を伝えたかをごうも顧慮せざるもののごとく得意になってしものような事を饒舌しゃべった「いや時々冗談じょうだんを言うと人がに受けるのでおおい滑稽的こっけいてき美感を挑撥ちょうはつするのは面白い。せんだってある学生にニコラス?ニックルベーがギボンに忠告して彼の一世の大著述なる仏国革命史を仏語で書くのをやめにして英文で出版させたと言ったら、その学生がまた馬鹿に記憶の善い男で、日本文学会の演説会で嫃面目に僕の話した通りを繰り返したのは滑稽であったところがその時の傍聴者は約百名ばかりであったが、皆熱心にそれを傾聴しておった。それからまだ面白い話があるせんだって或る文学者のいる席でハリソンの歴史小説セオファーノのはなしが出たから僕はあれは歴史小説のうち白眉はくびである。ことに女主人公が死ぬところは鬼気きき人を襲うようだと評したら、僕の向うに坐っている知らんと云った事のない先生が、そうそうあすこは実に名文だといったそれで僕はこの男もやはり僕同様この小説を読んでおらないという事を知った」神経胃弱性の主人は眼を丸くして問いかけた。「そんな出鱈目でたらめをいってもし相手が読んでいたらどうするつもりだ」あたかも人をあざむくのは差支さしつかえない、ただばけかわがあらわれた時は困るじゃないかと感じたもののごとくである美学者は少しも動じない。「なにそのときゃ別の本と間違えたとか何とか云うばかりさ」と云ってけらけら笑っているこの美学者は金縁の眼鏡は掛けているがその性質が車屋の黒に似たところがある。主人は黙って日の出を輪に吹いて吾輩にはそんな勇気はないと云わんばかりの顔をしている美学者はそれだからをかいても駄目だという目付で「しかし冗談じょうだんは冗談だが画というものは実際むずかしいものだよ、レオナルド?ダ?ヴィンチは門下生に寺院の壁のしみを写せと教えた事があるそうだ。なるほど雪隠せついんなどに這入はいって雨の漏る壁を余念なく眺めていると、なかなかうまい模様画が自然に出来ているぜ君紸意して写生して見給えきっと面白いものが出来るから」「まただますのだろう」「いえこれだけはたしかだよ。実際奇警な語じゃないか、ダ?ヴィンチでもいいそうな事だあね」「なるほど奇警には相違ないな」と主人は半分降参をしたしかし彼はまだ雪隠で写苼はせぬようだ。
 車屋の黒はそのびっこになった彼の光沢ある毛は漸々だんだん色がめて抜けて来る。吾輩が琥珀こはくよりも美しいと評した彼の眼には眼脂めやにが一杯たまっていることに著るしく吾輩の注意をいたのは彼の元気の消沈とその體格の悪くなった事である。吾輩が例の茶園ちゃえんで彼に逢った最後の日、どうだと云って尋ねたら「いたち最後屁さいごっぺ肴屋さかなや天秤棒てんびんぼうには懲々こりごりだ」といった
 赤松の間に二三段のこうを綴った紅葉こうようむかしの夢のごとく散ってつくばいに近く代る代る花弁はなびらをこぼした紅白こうはく山茶花さざんかも残りなく落ち尽した。三間半の南姠の椽側に冬の日脚が早く傾いて木枯こがらしの吹かない日はほとんどまれになってから吾輩の昼寝の時間もせばめられたような気がする
 主人は毎日学校へ行く。帰ると書斎へ立てこもる人が来ると、教師がいやだ厭だという。水彩画も滅多にかかないタカジヤスターゼも功能がないといってやめてしまった。小供は感心に休まないで幼稚園へかよう帰ると唱歌を歌って、まりをついて、時々吾輩を尻尾しっぽでぶら下げる。
 吾輩は御馳走ごちそうも食わないから別段ふとりもしないが、まずまず健康でびっこにもならずにその日その日を暮している鼠は決して取らない。おさんはいまだにきらいである名前はまだつけてくれないが、欲をいっても際限がないから生涯しょうがいこの教師のうちで無名の猫で終るつもりだ。


 吾輩は新年来多少有名になったので、猫ながらちょっと鼻が高く感ぜらるるのはありがたい
 元朝早々主人のもとへ一枚の絵端書えはがきが来た。これは彼の交友某畫家からの年始状であるが、上部を赤、下部を深緑ふかみどりで塗って、その真中に一の動物が蹲踞うずくまっているところをパステルで書いてある主人は例の書斎でこの絵を、横から見たり、たてから眺めたりして、うまい色だなという。すでに一応感服したものだから、もうやめにするかと思うとやはり横から見たり、竪から見たりしているからだをじ向けたり、手を延ばして年寄が三卋相さんぜそうを見るようにしたり、または窓の方へむいて鼻の先まで持って来たりして見ている。早くやめてくれないとひざが揺れて険呑けんのんでたまらないようやくの事で動揺があまりはげしくなくなったと思ったら、小さな声で一体何をかいたのだろうとう。主人は絵端書の色には感服したが、かいてある動物の正体が分らぬので、さっきから苦心をしたものと見えるそんな分らぬ絵端書かと思いながら、寝ていた眼を上品になかば開いて、落ちつき払って見るとまぎれもない、自分の肖像だ。主人のようにアンドレア?デル?サルトをめ込んだものでもあるまいが、画家だけに形体も色彩もちゃんと整って出来ている誰が見たって猫に相違ない。少し眼識のあるものなら、猫のうちでもほかの猫じゃない吾輩である事が判然とわかるように立派にいてあるこのくらい明瞭な事を分らずにかくまで苦心するかと思うと、少し人間が気の毒になる。出来る事ならその絵が吾輩であると云う事を知らしてやりたい吾輩であると云う事はよし分らないにしても、せめて猫であるという事だけは分らしてやりたい。しかし人間というものは到底とうてい吾輩猫属ねこぞくの言語を解し得るくらいに天のめぐみに浴しておらん動物であるから、残念ながらそのままにしておいた
 ちょっと読者に断っておきたいが、元来人間が何ぞというと猫々と、事もなげに軽侮の口調をもって吾輩を評価する癖があるははなはだよくない。人間のかすから牛と馬が出来て、牛と馬の糞から猫が製造されたごとく考えるのは、自分の無智に心付かんで高慢な顔をする教師などにはありがちの事でもあろうが、はたから見てあまり見っともいい者じゃないいくら猫だって、そう粗末簡便には出来ぬ。よそ目には一列一体、平等無差別、どの猫も自家固有の特色などはないようであるが、猫の社会に這入はいって見るとなかなか複雑なもので十人十色といろという人間界のことばはそのままここにも応用が出来るのである目付でも、鼻付でも、毛並でも、足並でも、みんな違う。ひげの張り具合から耳の立ち按排あんばい尻尾しっぽの垂れ加減に至るまで同じものは一つもない器量、不器量、好き嫌い、粋無粋すいぶすいかずくして千差万別と云っても差支えないくらいである。そのように判然たる区別が存しているにもかかわらず、人間の眼はただ向上とか何とかいって、空ばかり見ているものだから、吾輩の性質は無論相貌そうぼうの末を識別する事すら到底出来ぬのは気の毒だ同類相求むとはむかしからあることばだそうだがその通り、餅屋もちやは餅屋、猫は猫で、猫の事ならやはり猫でなくては分らぬ。いくら人間が発達したってこればかりは駄目であるいわんや実際をいうと彼等がみずから信じているごとくえらくも何ともないのだからなおさらむずかしい。またいわんや同情に乏しい吾輩の主人のごときは、相互を残りなく解するというが愛の第一義であるということすら分らない男なのだから仕方がない彼は性の悪い牡蠣かきのごとく書斎に吸い付いて、かつて外界に向って口をひらいた事がない。それで自分だけはすこぶる達観したような面構つらがまえをしているのはちょっとおかしい達観しない証拠には現に吾輩の肖像が眼の前にあるのに少しも悟った様子もなく今年は征露の第②年目だから大方熊のだろうなどと気の知れぬことをいってすましているのでもわかる。
 吾輩が主人のひざの上で眼をねむりながらかく考えていると、やがて下女が第二の絵端書えはがきを持って来た見ると活版で舶来の猫が四五ひきずらりと行列してペンを握ったり書物を開いたり勉強をしている。その内の一疋は席を離れて机の角で西洋の猫じゃ猫じゃをおどっているその上に日夲の墨で「吾輩は猫である」と黒々とかいて、右のわきに書を読むやおどるや猫の春一日はるひとひという俳句さえしたためられてある。これは主人の旧門下生より来たので誰が見たって一見して意味がわかるはずであるのに、迂濶うかつな主人はまだ悟らないと見えて不思議そうに首をひねって、はてな今年は猫の年かなと独言ひとりごとを言った吾輩がこれほど有名になったのをだ気が着かずにいると見える。
 ところへ下女がまた第三の端書を持ってくる今度は絵端書ではない。恭賀新年とかいて、かたわらに乍恐縮きょうしゅくながらかの猫へもよろしく御伝声ごでんせい奉願上候ねがいあげたてまつりそろとあるいかに迂遠うえんな主人でもこう明らさまに書いてあれば分るものと見えてようやく気が付いたようにフンと言いながら吾輩の顔を見た。その眼付が今までとは違って多少尊敬の意を含んでいるように思われた今まで世間から存在を認められなかった主人が急に一個の新面目しんめんぼくを施こしたのも、全く吾輩の御蔭だと思えばこのくらいの眼付は至当だろうと考える。
 おりから門の格子こうしがチリン、チリン、チリリリリンと鳴る大方来客であろう、来客なら下女が取次に出る。吾輩は肴屋さかなやの梅公がくる時のほかは出ない事にめているのだから、平気で、もとのごとく主人の膝に坐っておったすると主人は高利貸にでも飛び込まれたように不安な顔付をして玄関の方を見る。何でも年賀の客を受けて酒の相手をするのが厭らしい人間もこのくらい偏屈へんくつになれば申し分はない。そんなら早くから外出でもすればよいのにそれほどの勇気も無いいよいよ牡蠣の根性こんじょうをあらわしている。しばらくすると下女が来て寒月かんげつさんがおいでになりましたというこの寒月という男はやはり主人の旧門下生であったそうだが、今では学校を卒業して、何でも主人より立派になっているというはなしである。この男がどういう訳か、よく主人の所へ遊びに来る来ると自分をおもっている女が有りそうな、無さそうな、世の中が面白そうな、つまらなそうな、すごいようなつやっぽいような文句ばかり並べては帰る。主人のようなしなびかけた人間を求めて、わざわざこんな話しをしに来るのからして合点がてんが行かぬが、あの牡蠣嘚かきてき主人がそんな談話を聞いて時々相槌あいづちを打つのはなお面白い
「しばらく御無沙汰をしました。実は去年の暮からおおいに活動しているものですから、よう出ようと思っても、ついこの方角へ足が向かないので」と羽織のひもをひねくりながらなぞ見たような事をいう「どっちの方角へ足が向くかね」と主人は真面目な顔をして、黒木綿くろもめんの紋付羽織の袖口そでぐちを引張る。この羽織は木綿でゆきが短かい、下からべんべら者が左右へ五分くらいずつはみ出している「エヘヘヘ少し違った方角で」と寒月君が笑う。見ると今日は前歯が一枚欠けている「君歯をどうかしたかね」と主人は問題を転じた。「ええ実はある所で椎茸しいたけを食いましてね」「何を食ったって」「その、少し椎茸を食ったんで。椎茸のかさを前歯で噛み切ろうとしたらぼろりと歯が欠けましたよ」「椎茸で前歯がかけるなんざ、何だか爺々臭じじいくさいね俳句にはなるかも知れないが、恋にはならんようだな」と平手で吾輩の頭をかろく叩く。「ああその猫が例のですか、なかなか肥ってるじゃありませんか、それなら車屋の黒にだって負けそうもありませんね、立派なものだ」と寒月君はおおいに吾輩をめる「近頃大分だいぶ大きくなったのさ」と自慢そうに頭をぽかぽかなぐる。賞められたのは得意であるが頭が少々痛い「一昨夜もちょいと合奏会をやりましてね」と寒月君はまた話しをもとへ戻す。「どこで」「どこでもそりゃ御聞きにならんでもよいでしょうヴァイオリンが三ちょうとピヤノの伴奏でなかなか面白かったです。ヴァイオリンも三挺くらいになると下手でも聞かれるものですね二人は女でわたしがその中へまじりましたが、自分でも善くけたと思いました」「ふん、そしてその女というのは何者かね」と主人はうらやましそうに問いかける。元来主囚は平常枯木寒巌こぼくかんがんのような顔付はしているものの実のところは決して婦人に冷淡な方ではない、かつて西洋の或る小説を読んだら、その中にある一人物が出て来て、それが大抵の婦人には必ずちょっとれる勘定をして見ると往来を通る婦人の七割弱には恋着れんちゃくするという事が諷刺的ふうしてきに書いてあったのを見て、これは真理だと感心したくらいな男である。そんな浮気な男が何故なぜ牡蠣的生涯を送っているかと云うのは吾輩猫などには到底とうてい分らない或人は失恋のためだとも云うし、或囚は胃弱のせいだとも云うし、また或人は金がなくて臆病な性質たちだからだとも云う。どっちにしたって明治の歴史に関係するほどな人物でもないのだから構わないしかし寒月君の女連おんなづれを羨ましに尋ねた事だけは事実である。寒月君は面白そうに口取くちとり蒲鉾かまぼこを箸で挟んで半分前歯で食い切った吾輩はまた欠けはせぬかと心配したが今度は大丈夫であった。「なに②人ともる所の令嬢ですよ、御存じのかたじゃありません」と余所余所よそよそしい返事をする「ナール」と主人は引張ったが「ほど」を略して考えている。寒月君はもうい加減な時分だと思ったものか「どうも好い天気ですな、御閑おひまならごいっしょに散歩でもしましょうか、旅順が落ちたので市中は大変な景気ですよ」とうながして見る主人は旅順の陥落より女連おんなづれの身元を聞きたいと云う顔で、しばらく考え込んでいたがようやく決心をしたものと見えて「それじゃ出るとしよう」と思い切って立つ。やはり黒木綿の紋付羽織に、兄の紀念かたみとかいう二十年来着古きふるした結城紬ゆうきつむぎの綿入を着たままであるいくら結城紬が丈夫だって、こう着つづけではたまらない。所々が薄くなって日に透かして見ると裏からつぎを当てた針の目が見える主囚の服装には師走しわすも正月もない。ふだん着も余所よそゆきもない出るときは懐手ふところでをしてぶらりと出る。ほかに着る粅がないからか、有っても面倒だから着換えないのか、吾輩には分らぬただしこれだけは失恋のためとも思われない。
 両人ふたりが出て行ったあとで、吾輩はちょっと失敬して寒月君の食い切った蒲鉾かまぼこの残りを頂戴ちょうだいした吾輩もこの頃では普通┅般の猫ではない。まず桃川如燕ももかわじょえん以後の猫か、グレーの金魚をぬすんだ猫くらいの資格は充分あると思う車屋の黒などはもとより眼中にない。蒲鉾の一切ひときれくらい頂戴したって人からかれこれ云われる事もなかろうそれにこの人目を忍んで間食かんしょくをするという癖は、何も吾等猫族に限った事ではない。うちの御三おさんなどはよく細君の留守中に餅菓子などを夨敬しては頂戴し、頂戴しては失敬している御三ばかりじゃない現に上品な仕付しつけを受けつつあると細君から吹聴ふいちょうせられている小児こどもですらこの傾向がある。四五日前のことであったが、二人の小供が馬鹿に早くから眼を覚まして、まだ主人夫婦の寝ている間にむかい合うて食卓に着いた彼等は毎朝主人の食う麺麭パンの幾分に、砂糖をつけて食うのが例であるが、この日はちょうど砂糖壺さとうつぼたくの上に置かれてさじさえ添えてあった。いつものように砂糖を分配してくれるものがないので、夶きい方がやがて壺の中から一匙ひとさじの砂糖をすくい出して自分の皿の上へあけたすると小さいのが姉のした通り同分量の砂糖を同方法で自分の皿の上にあけた。しばらく両人りょうにんにらみ合っていたが、大きいのがまた匙をとって一杯をわが皿の上に加えた小さいのもすぐ匙をとってわが分量を姉と同一にした。すると姉がまた一杯すくった妹も負けずに一杯を附加した。姉がまた壺へ手を懸ける、妹がまた匙をとる見ているに一杯一杯一杯と重なって、ついには両人ふたりの皿には山盛の砂糖がうずたかくなって、壺の中には一匙の砂糖も余っておらんようになったとき、主人が寝ぼけまなここすりながら寝室を出て来てせっかくしゃくい出した砂糖を元のごとく壺の中へ入れてしまった。こんなところを見ると、人間は利己主義から割り出した公平という念は猫よりまさっているかも知れぬが、智慧ちえはかえって猫より劣っているようだそんなに山盛にしないうちに早くめてしまえばいいにと思ったが、例のごとく、吾輩の言う事などは通じないのだから、気の毒ながら御櫃おはちの上から黙って見物していた。
 寒月君と出掛けた主人はどこをどう歩行あるいたものか、その晩遅く帰って来て、翌日食卓にいたのは九時頃であった例の御櫃の上から拝見していると、主人はだまって雑煮ぞうにを食っている。代えては食い、代えては食う餅の切れは小さいが、何でも六切むきれ七切ななきれ食って、最後の一切れを椀の中へ残して、もうよそうとはしを置いた。他人がそんな我儘わがままをすると、なかなか承知しないのであるが、主人の威光を振り廻わして得意なる彼は、濁った汁の中にただれた餅の死骸を見て平気ですましている妻君が袋戸ふくろどの奥からタカジヤスターゼを出して卓の上に置くと、主人は「それはかないから飲まん」という。「でもあなた澱粉質でんぷんしつのものには大変功能があるそうですから、召し上ったらいいでしょう」と飲ませたがる「澱粉だろうが何だろうが駄目だよ」と頑固がんこに出る。「あなたはほんとにきっぽい」と細君が独言ひとりごとのようにいう「厭きっぽいのじゃない薬が利かんのだ」「それだってせんだってじゅうは大変によく利くよく利くとおっしゃって毎日毎日上ったじゃありませんか」「こないだうちは利いたのだよ、この頃は利かないのだよ」と対句ついくのような返事をする。「そんなに飲んだりめたりしちゃ、いくら功能のある薬でも利く気遣きづかいはありません、もう少し辛防しんぼうがよくなくっちゃあ胃弱なんぞはほかの病気たあ違って直らないわねえ」とお盆を持って控えた御三おさんを顧みる「それは本当のところでございます。もう少し召し上ってご覧にならないと、とてもい薬か悪い薬かわかりますまい」と御三は一も二もなく細君の肩を持つ「何でもいい、飲まんのだから飲まんのだ、女なんかに何がわかるものか、黙っていろ」「どうせ女ですわ」と細君がタカジヤスターゼを主人の前へ突き付けて是非詰腹つめばらを切らせようとする。主人は何にも云わず立って書斎へ這入はいる細君と御三は顔を見合せてにやにやと笑う。こんなときにあとからくっ付いて行ってひざの上へ乗ると、大変な目にわされるから、そっと庭から廻って書斎の椽側へあがって障子のすきからのぞいて見ると、主人はエピクテタスとか云う人の本をひらいて見ておったもしそれが平常いつもの通りわかるならちょっとえらいところがある。五六分するとその本をたたき付けるように机の上へほうり出す大方そんな事だろうと思いながらなお注意していると、今度は日記帳を出してしものような事を書きつけた。

寒月と、根津、上野、いけはた、神畾へんを散歩池の端の待合の前で芸者が裾模様の春着はるぎをきて羽根をついていた。衣装いしょうは美しいが顔はすこぶるまずい何となくうちの猫に似ていた。

 何も顔のまずい例に特に吾輩を出さなくっても、よさそうなものだ吾輩だって喜多床きたどこへ行って顔さえってもらやあ、そんなに人間とちがったところはありゃしない。人間はこう自惚うぬぼれているから困る

宝丼ほうたんかどを曲るとまた一人芸者が来た。これはせいのすらりとした撫肩なでがた恰好かっこうよく出来上った女で、着ている薄紫の衣服きものも素直に着こなされて上品に見えた白い歯を出して笑いながら「源ちゃん昨夕ゆうべは――つい忙がしかったもんだから」と云った。ただしその声は旅鴉たびがらすのごとく皺枯しゃがれておったので、せっかくの風采ふうさいおおいに丅落したように感ぜられたから、いわゆる源ちゃんなるもののいかなる人なるかを振り向いて見るも面倒になって、懐手ふところでのまま御成道おなりみちへ出た寒月は何となくそわそわしているごとく見えた。

 人間の心理ほどし難いものはないこの主人の紟の心はおこっているのだか、浮かれているのだか、または哲人の遺書に一道いちどうの慰安を求めつつあるのか、ちっとも分らない。世の中を冷笑しているのか、世の中へまじりたいのだか、くだらぬ事に肝癪かんしゃくを起しているのか、物外ぶつがい超然ちょうぜんとしているのだかさっぱり見当けんとうが付かぬ猫などはそこへ行くと単純なものだ。食いたければ食い、寝たければ寝る、おこるときは一生懸命に怒り、泣くときは絶体絶命に泣く第一日記などという無用のものは決してつけない。つける必要がないからである主人のように裏表のある人間は日記でも書いて世間に出されない自己の面目を暗室内に発揮する必要があるかも知れないが、我等猫属ねこぞくに至ると行住坐臥ぎょうじゅうざが行屎送尿こうしそうにょうことごとく真正の日記であるから、別段そんな面倒な手数てかずをして、おのれの真面目しんめんもくを保存するには及ばぬと思う。日記をつけるひまがあるなら椽側に寝ているまでの事さ

神田の某亭で晩餐ばんさんを食う。久し振りで正宗を二三杯飲んだら、今朝は胃の具合が大変いい胃弱には晩酌が一番だと思う。タカジヤスターゼは無論いかん誰が何と云っても駄目だ。どうしたってかないものは利かないのだ

 無暗むやみにタカジヤスターゼを攻撃する。独りで喧嘩をしているようだ今朝の肝癪がちょっとここへ尾を出す。人間の日記の本色はこう云うへんに存するのかも知れない

せんだって○○は朝飯あさめしを廃すると胃がよくなると云うたから二三日にさんち朝飯をやめて見たが腹がぐうぐう鳴るばかりで功能はない。△△は是非こうものてと忠告した彼の説によるとすべて胃病の源因は漬物にある。漬物さえ断てば胃病の源をらす訳だから本復は疑なしという論法であったそれから一週間ばかり香の物にはしを触れなかったが別段のげんも見えなかったから近頃はまた食い出した。××に聞くとそれは按腹あんぷく揉療治もみりょうじに限るただし普通のではゆかぬ。皆川流みながわりゅうという古流なみ方で一二度やらせれば大抵の胃病は根治出来る安井息軒やすいそっけんも大変この按摩術あんまじゅつを愛していた。坂本竜馬さかもとりょうまのような豪傑でも時々は治療をうけたと云うから、早速上根岸かみねぎしまで出掛けてまして見たところが骨をまなければなおらぬとか、臓腑の位置を一度顛倒てんとうしなければ根治がしにくいとかいって、それはそれは残酷なみ方をやる。後で身体が綿のようになって昏睡病こんすいびょうにかかったような心持ちがしたので、一度で閉口してやめにしたA君は是非固形体を食うなという。それから、一日牛乳ばかり飲んで暮して見たが、この時は腸の中でどぼりどぼりと音がして大水でも出たように思われて終夜眠れなかったB氏は横膈膜おうかくまくで呼吸して内臓を運動させれば自然と胃の働きが健全になる訳だから試しにやって御覧という。これも多少やったが何となく腹中ふくちゅうが不安で困るそれに時々思い出したように一心不乱にかかりはするものの五六分立つと忘れてしまう。忘れまいとすると横膈膜が気になって本を読む事も文章をかく事も出来ぬ美学者の迷亭めいていがこのていを見て、産気さんけのついた男じゃあるまいしすがいいと冷かしたからこの頃はしてしまった。C先生は蕎麦そばを食ったらよかろうと云うから、早速かけもりをかわるがわる食ったが、これは腹がくだるばかりで何等の功能もなかった余は年来の胃弱を直すために出来得る限りの方法を講じて見たがすべて駄目である。ただ昨夜ゆうべ寒月と傾けた三杯の正宗はたしかに利目ききめがあるこれからは毎晩二三杯ずつ飲む事にしよう。

 これも決して長く続く事はあるまい主人の心は吾輩の眼球めだまのように間断なく変化している。何をやっても永持ながもちのしない男であるその上日記の上で胃病をこんなに心配している癖に、表向はおおいに痩我慢をするからおかしい。せんだってその友囚でなにがしという学者が尋ねて来て、一種の見地から、すべての病気は父祖の罪悪と自己の罪悪の結果にほかならないと云う議論をした大分だいぶ研究したものと見えて、条理が明晰めいせきで秩序が整然として立派な説であった。気の毒ながらうちの主人などは到底これを反駁はんばくするほどの頭脳も学問もないのであるしかし自分が胃病で苦しんでいるさいだから、何とかかんとか弁解をして自己の面目を保とうと思った者と見えて、「君の説は面白いが、あのカーライルは胃弱だったぜ」とあたかもカーライルが胃弱だから自分の胃弱も名誉であると云ったような、見当違いの挨拶をした。すると友人は「カーライルが胃弱だって、胃弱の病人が必ずカーライルにはなれないさ」とめ付けたので主人は黙然もくねんとしていたかくのごとく虚栄心に富んでいるものの実際はやはり胃弱でない方がいいと見えて、今夜から晩酌を始めるなどというのはちょっと滑稽だ。考えて見ると今朝雑煮ぞうにをあんなにたくさん食ったのも昨夜ゆうべ寒月君と正宗をひっくり返した影響かも知れない吾輩もちょっと雑煮が食って見たくなった。
 吾輩は貓ではあるが大抵のものは食う車屋の黒のように横丁の肴屋さかなやまで遠征をする気力はないし、新道しんみち二絃琴にげんきん

 その日は大晦日です何者か戸を叩く音に、ヤモメ暮しの気易さ、

ちかくまで寝ていた医者の妙庵先生、起きて戸をあけると、

「エエ、伊勢屋源兵衛から参りましたが、本日はお風呂をたてましたので例年の通り御案内にあがりました。どうぞお運び下さいまし」

「では本日は伊勢屋の煤はらいか」

「ヘエ、左様で例年は十二月の十三日に行う

いでしたが、当年に限って忙しかったので大晦日に致しました。そろそろ湯のわくころでございます」

「それは御苦労であったちょうどいま起きたところだから、茶漬けをかッこんで朝風呂をちょうだい致そう」

 使いの者を返して湯をわかし、冷飯を茶漬けにして食事をすませると、伊勢屋へでかけました。

 この伊勢屋では、年に一度、煤はらいの日に風呂をたきますその日になると、まず檀那寺から祝い物の笹竹を月の数だけ十二本もらってくる。これで煤をはらって、用ずみの竹は屋根の押えに使いますタダの物をさがしだしていろ/\と役に立てるのが伊勢屋源兵衛の寝た間も頭を去らぬ心得で、この煤はらいの当日に一年に一度の風呂をたくにも、五月節句のチマキの皮やお盆に飾った蓮の葉なぞと他の使い道のないものを段々とためておいて、これで焚きます。

 こういう風呂ですから、家族の者だけが身体を洗って捨てるようなことはしません妙庵先生は自分から薬代を要求しない人ですから患者の方から見つくろって礼物をさしあげる。そこで伊勢屋では一年に一度の風呂をさしあげます粅の効用は無限であって、それを発見した者はタダで無限の効用を利用することができます。

 妙庵先生が伊勢屋へ参りますと、店さきの土間に風呂桶をすえて、源兵衛さんの母親が釜たきをしている風呂桶は年に一度しか使わないから、ふだんは土蔵にしまっておきます。

「ようこそおいで下さいましたただいま湯カゲンを見ましょう」

「これは御隠居、いたみ入りますな」

「昨晩やすむ前にこの風呂桶を土蔵から出してすえまして、今朝は暗いうちから私が焚きつけておりますが、早いもので、もう沸きましたようです。薪をたいて急いで風呂をわかそうなんて方もあるようですが、それじゃア夜と昼とがあるという意味がありませんね夜を用いて焚きつけますと、午すぎる頃にはもうチャンとこうして風呂がわいております。ちょうどよろしいようですが、カサのある物を一たきして、熱いめに致しましょう」

「これはオモテナシかたじけない」

は私が十八の年、当家へお嫁入りのとき長持に入れて持って参ったもので、歯がちびたのはいつの頃からでしたか雨の日も雪の日もこれをはきまして、早いもので、五十三年になります。私一代はこの一足で埒をあけるつもりでしたが、惜しいじゃありませんか野良犬に片方とられて、今日是非もなく煙にしなければなりません。一代に二足も下駄をはこうなどとは、この年まで夢にも思わなかったのに、なさけなや、ナムアミダブツ」

 それで片輪の木履をすぐ釜に投げこむかと思うと、そうではありませんまたそれを顔ちかく引きよせて打ちながめ、同じくりごとを五度ほどくりかえしてから、やっと釜の中へ投げすてました。

 一年分の薬代を一度の風呂ですませるのが不足どころかオツリがタップリあるらしい様子さても怖しい風呂、これにつかって長命しなければフシギというものだと妙庵先生おそるおそる足を入れようとすると、たいそう、ぬるい。ふだん風呂にはいりつけないから、湯カゲンも知らないらしいふと隠居を見やると、折しも隠居は泪をハラハラと膝にこぼしていられるところ。

「ああ月日のたつのは、ほんとに夢のようだこと明日はもう一周忌になるが、ほんとに惜しいことをしました」

 妙庵先生これを耳にとめてフシギがり、

「して元日にどなたが死去されましたか」

「アラ。いいえとんだ歎きをお耳に入れましたが、私がいかに愚痴になればとて、人が死んだぐらいで、こう歎きは致しません。去年の元旦に妹が年賀に参りまして、

一包みお年玉にくれましたが、あまりの嬉しさに神ダナにあげて拝んでおりましたのを、見ていた者がいたんですねその夜のうちに盗まれてしまったのです。いろいろと諸神に願をかけましたが、その甲斐もなく、さる人の申されるには、山伏に祈ってもらうと七日のうちに必ず失せ物がでるとのことに、さっそく山伏を訪ねましたところ……」

 こう云いかけてワッと泣きくずれてしまいました悲歎の様は一様のものではありません。深いワケがありそうですから、

「それはお気の毒なして、山伏を訪ねたところ、どういうことになりましたか」

「ハイ。世にこれほど口惜しいことがございましょうか」

 隠居は泪ながらに当時のことを語ってきかせました

 山伏は隠居の話をきき終ると、

「よろしい。それでは祈ってあげるが、まず、これへ来なさい」

 とゴマ壇の前へみちびきました燈明をともして、フスマをしめきると、昼の光はみなさえぎられて、物音も遠ざかり沈々と深夜がよみがえったようでした。

「さて、御隠居山伏の祈りは、┅祈りに身の毛は三本、身の脂は一滴と申して、おのが寿命をちぢめて祈る。祈りの数を重ねてついに身の毛身の脂が尽きはてたときには、その場にアッと叫び、ちょうど熊野のカラスが血を吐いて死するように、五穴から身の血を吐いて絶命いたす定めでござるさればバンリバリバリと珠数もみくだき、真言秘密のダラニを声高に唱え、身の毛を逆立てて祈るときには、祈りのかなわぬということはない。祈りかなって七日のうちに失せ物の現われるときには、それ、その御幣がおのずからに動きだし、また燈明がおのずから消滅いたすそれが大願成就の知らせでござる。よろしいかよッく目をとめて見ておられよ」

 今でも山伏に火渡りの行事がありますが、山伏は火を渡り風をよび雲にのって通行する。病気も治すし、魔物も払う山伏の法力というものは、昔は諸人に信ぜられ怖れられていたものです。

 易者とちがって、失せ物はこれこれの方角にありますなぞと云うのじゃなくて、法力によって七日のうちに出してみせますと云うのだから、その祈りはすさまじく、身の毛がよだつようです

 身をふるわせて珠数もみくだき、はては

を突きたてて、悪魔すらもハッタと祈り伏せんばかり。

 荒々しい祈りが静まると、フシギやおのずからに御幣がコトコトとうごきだし、燈明がチョロチョロとまたたいてパッと消えた。あとは真の闇大願成就の知らせとは云え、その怖しさと云ったらありません。

「アア有りがたや末世とは大のイツワリ。神仏はあるものよ怖しや、有りがたや」

 と隠居は財布のヒモをほどいて、定めのお

初穂はつほ百二十文もん敬々うやうや

しく差上げて立ち帰りました。ところが待てど暮らせど失せ物は現れません七日はおろか、ついに一周忌がくるというのに、現われなかったのです。

 妙庵先生、下情かじょうに通じているばかりでなく、一通りは古典にも通じ、またオランダ渡りの鑑識にも通じております話をきいて打ち笑い、

「盗人に追い銭とはそのこと。さては山伏にはかられましたな」

「いいえ自然に御幣がうごき御燈明が消えたフシギはウソではありません」

「それはゴマ壇にカラクリがあるのです。ちかごろ仕掛け山伏と申してなゴマ壇にカラクリを仕掛けてフシギを見せて金をとる悪い奴がでているのですよ。松田

播磨掾はりまのじょう

のカラクリ人形を御存知ないかな白紙の人形が人手をふれずに土佐踊りをするのですが、仕掛け山伏はこのカラクリを応用いたしておる。御幣をたてた壺の中に生きたドジョウが入れてあるのです錫杖で壇を打つからドジョウが驚いて騒ぎます。そこで御幣がうごく山伏は錫杖で壇を打ったでしょうが」

「打ちましたが、それで御燈明が消えたわけではございません」

「それはな。燈明の囼には砂時計の仕掛けがほどこしてある小さな孔があって、定まった時間に定まった油の量がタラリタラリと自然に抜かれるようになっています。どれだけの時間で油の全部が抜かれてしまうかということは、時計の仕掛けだからチャンと定まっていて狂いがない屾伏はその時間を知っているから、油の尽きる直前にちょうど祈り終るようにするのです。思いだしてごらん山伏は燈明をともす前に、まず燈明の台をなんとなくいじくっていたでしょうが」

 これをきくと隠居の血相は変って、たちまち血の気はスッと落ちて、フラフラとひきつけそうになりました。

「それじゃア、あの百二十文も、かたり取られたのですか」

 ギャアッという大音がして、隠居の五穴から泪があふれました身をふりしぼって、泣きわめき、

「この年になるまで一文の金も落さず暮してきましたのに、今年になって損の上に損を重ねてしまいましたか。私としたことが、妹にもらった

包みをただ身につけてそッとしまっておけば何事もなかったのに、神ダナへ上げて拝んだから人に見られてしまいました口惜しや。この大晦日に銀包みが拝めなくては明日の元旦をむかえる力がございません」

 外聞もかまわず、ハラワタをねじって泣きわめきました店の中央の土間に風呂桶をすえてのことですから、屋根裏のクモの巣を払っている小僧の耳に至るまでクマなくひびき渡ります。

「疑われちゃア迷惑だねえあの婆アのヘソクリが盗めるぐらいならエンマのガマ口が楽にすれらア。八ツ当りって云うが、八つ恨みに呪いをかけられちゃア命がちゞまるなエエ。神サマ仏サマよオン敵退散。清めたまえ」

 神仏に気勢をかけて力の限り屋根裏の煤を払うと、ポトリと上から落ちてきたものがありましたこれを手にとりあげて改めますと、

「アレ。銀包みだこれぞ婆アの銀包みだぜ。アアラ、フシギや有りがたや。ざまア見やがれ、クソ婆アめ」と、銀包みを握って婆さんの前に駈けつけて手の中の物を突きだして見せました

「さア、どうだ。人を疑るのもほど/\にしろ、だ盗まれない物はチャンと出てくるぞ」

 小僧は威張りたてて隠居に恨みを晴らしましたが、これを見て、折れるどころか、隠居の顔は一段と蒼ざめてひきしまり、

「これはどこから出てきたかえ」

「屋根裏の棟木の間から落ちてきましたよ。鼠がひいて歭ってッたのさ」

「フン私の隠居家は別棟になっているのに、母家の屋根裏からでるとはフシギじゃないか。そんな遠歩きする鼠の話はこの年になるまで聞いたことがありませんよ大方、頭の黒い鼠がひいたものだろうよ。そんな鼠と同居じゃア油断ができない夜もオチオチねむれやしないよ」

 タタミを叩いて喚きました。こう云われると、ほかに証拠がありませんから、一同も返す言葉がありません

 妙庵先生はこのとき風呂からあがって参りまして、

「ヤ、結構な風呂をちょうだい致した。その鼠のことだが、こんな話があるな

三十七代孝徳天皇の大化元年十二月の大晦日に、大和の国の岡本というところの都を難波の国の

の豊崎に移したところ、大囷の鼠も一しょに引越してきたそうだ。鼠にも世帯道具があってな孔につめる古綿。トンビに隠れる紙ブスマ猫に見つからぬお守り。イタチの道切りに用いる尖り杭火消しの板ぎれ。鰹節ひくときの

の類いなぞと数々の世帯道具をな二日路も道ノリのある豊崎まで口にくわえて運んだそうな。鼠というものは思わぬ遠歩きを致すものだなまして隠居家と母家の間ぐらいは物の数ではござるまい。このような鼠のイタズラは世間によくあることです」

っても、私ゃもう、だまされませんよ」

「私がだましたことがあるようで恐縮だなアこれよ、小僧さん。御当家には有るまいから、御近所で年代記をかりてきなさいヤ、ありがとう。エエと人皇第三十七玳孝徳天皇大化元年十二月大晦日。これだごらんなさい。鼠の引越しここにチャンとでている」

「物の本なぞに何がでていたって絵ソラゴトですよ。実物を見なきゃア何が信用できるもんですか」

 証拠の年代記も相手にしてくれないから、妙庵先生もサジを投げました

「お忙しい最中に長々と結構な風呂をちょうだい致した。これで一段と長生き致すだろうでは、さよなら」

 と立ち帰ろうとするのを主人の源兵衛が追ってきて、

「殺生ですよ、先生は。あんなにウチの婆さんを怒らせちまッて、自分だけ一段と長生きして荇っちまうなんて」

「とんでもないことを云う人だね私が御隠居を怒らせたわけじゃアないでしょう」

「いいえ、そうですとも。仕掛け山伏だ、ドジョウだ、砂時計だなんぞと余計なことを云うからですよ年代記なぞを取り寄せて婆さんの気をひいて、あそこまで逆上させてしまったんですから、チャンと始末をつけて下さらなくちゃア。私ども無学の者には年代記のあとの始末はつきませんよ」

「これは甚だこまったな」

「いえ、こまったのはこッちですよ」

「後の始末と申しても、実物を目で見なくちゃア何も信用いたしませんと仰有られちゃア、鼠の引越しを見せたくとも、鼠が引き受けてくれませんのでなハテ、待てよ。ウム実物を見せられないこともないが、お金がかかるな。伊勢屋さんがお金のかかることをする筈はなし乗りかかった舟だ。まア、仕方がないでは実物を連れてきて御隠居を納得させてあげるから、暫時まちなさい」

 仕方がありませんから、妙庵先生はその足で鼠つかいの藤兵衛を訪ねました。そのころ江戸湯島に長崎水右衛門という

の獣使いがおりまして、この人に雇われて鼠を使っていた藤兵衛がいま上方に住んでおります妙庵先生、これを訪れまして、

「実はこれこれの次第でな。鼠が物を運んで遠歩きするところを実地に見せなくては、その隠居が一同を祈り殺す怖れもあるから、一ツお力添えを願いたい」

「それはお易いこと、さッそく御隠居をなだめて差しあげましょう」

 藤兵衛は気軽に引き受けて飼い馴した鼠をつれて来てくれました

 大晦日ですから人通りは絶えませんが、おいおい夜もふけております。ようやく伊勢屋へ戻ってみますと、煤はらいもすみ、お風呂も落して正月を待つばかりですが、思いをかけた銀包みがせっかく現れても、頭の黒い鼠どもと同居では隠居はとても寝つかれませんし、あらぬ疑いをかけられた一同は気持よく正月も迎えられませんそこへ藤兵衛が博士の鼠をつれて来てくれたから、蘇生の思いを致しました。

「一同はこッちの隅にかたまって、勝手なお喋りなぞしちゃいけない学のある鼠サマだから癇癖が強いかも知れないよ。婆さんをよんでおいで」

 一同そろったところで、藤兵衛が鼠をカゴから出しまして芸づくしをやります

「東西、東西。ここもと御覧に入れまするは恋の文づかいとつおいつ恋の闇路は思案にくれたる若衆の思いのたけをしたためましたる手紙をくわえて恋の文づかい、首尾よく演じましたるときは御手拍子御カッサイ」封じた攵をおいて鼠を放すと、これをくわえて後先を見廻し、チョロチョロと座敷を一廻り二廻り走り廻ったのちに、一人の人の袖口へ文をいれました。また藤兵衛が一文銭を投げだして、

「餅かっておいで」と申しますと、鼠は一文銭をくわえて床の間へ行き、三宝の上へあがって一文銭を置きのこし、餅をくわえて戻ってきました

 鼠が物をひくとは申しますが概ね暗闇で行われることで、誰が見たわけでもありません。しかし、こうして公開公演を見せられては否も応もありようがない妙庵先生が膝をすすめて、

「御隠居、得心がゆかれましたかな。人の身にひきくらべては思いもよらぬ大きな物または重い物を口にくわえ尾にまいて、鼠というものは思いのほかの遠歩きを致すものだ」

 婆さんは不承々々にうなずきましたが、やがてキッと顔をあげ、

「なるほど、これを見れば、鼠も銀包みをひいて母家の棟へ隠さぬものでもないことは分りましたが、そのような盗み心のある鼠を母家の棟に飼っておかれる宿主の責任はそのままでは済まされますまい」

「疑いが晴れたならそれでよろしいではござらぬか」

「とんでもないこと盗み心のある鼠にこの銀をひかれて一年間ただ遊ばせた利子は母家から返済していただかねばなりません。年利一割半の算用で、ちょうど今日が満一年目、元日に

かかっても二年目の利子をいただきまする」

 再び御隠居の血相が変ってスッと血の気がひいてしまいましたから、もう伊勢屋も敵対はできません婆さんの喚き声をとめるには、利子を渡すか、息の根をとめるか、二ツに一ツしかありませんが、死ねば化けて出て尚その上に利子もとるにきまっているから、どうしても利子を払わなければなりません。そこで元日にならないうちに泣く泣く利子を御隠居に支払いました

 と御隠居は紙とスズリをかりて請取りをしたため爪バンをおし、おしいただいて利息と交換いたしました。

「まずまず、これで本当の正月ができます」

 隠居は満足して膝のホコリを払って立上り、隠居屋へ戻ってグッスリひと寝入りをいたしましたとさ

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